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アルが悪いもの

こうして俺がアルに初めて怒った日から少し経った。 「杉田さん、じゃあ今日はあちらで書類の整理の仕事をお願いします。」 「あ、山田さん…わかりました…」 俺は今アルのマネージャー業務から離れていた。今日は山田さんに頼まれた通り倉庫で書類の整理だ。 アルを怒った後、少なくとも俺は仕事に支障を出すわけにはいかないと思っていたから仕事は今まで通りしていた。でも俺とアルの間の空気が違うことに目ざとく気づいた社長に問い詰められ、事の顛末を話した結果今に至る。社長曰く『今学がマネージャー業務についてるメリットがないから。』だそうだ。でも俺もその考えは正しいと思う… だって星野さんほど仕事ができるわけじゃないし…アルが気に入ってないんだったら俺がアルのそばにいる意味はない。 ちなみに今アルのマネージャーは以前同様星野さんが一人で担当している。 俺はまだアルを許してはいなかった。社長のお陰でアルのそばで過ごす時間が減ったから、冷静に考える時間もできたけどやっぱり言っていいことと悪いことはあると思う…… 「……ふん…」 倉庫で指定された書類が入っているファイルを探しながら考えていた。 なんでもなさそうな顔で『翔さんとエッチしなかったんだ…』って言うアルが思い出されてまたあの時のイライラを思い出す。 今も家ではアルと一緒だけど仕事が別々になったこともあって、生活リズムがお互い違うので顔を合わせることはめっきり減った。アルもはじめのうちは俺に会うたび慌てたように後をついてきて「ごめんね…」と繰り返していたけど最近は俺を見てもしゅんと目を伏せるだけで近寄ってこない。あの様子からするとまだなんで俺が怒ったかは分かっていないみたいだった。 星野さんから聞いた話によるとあいかわらず内面のコンディションがモロに仕事にも影響しているらしく、拍車をかけて仕事はあまり上手くいってないようだ。 …………もしかして………ちょっと…きつく言い過ぎたかな…… 星野さんからその話を聞いて少しそう思った。せっかくテレビまでは順調だったのにもしかして俺のせいで…って… けれど頭を振ってその考えをかき消す。 今回のことはアルが悪いもの… ここ数日幾度となくした思考を繰り返して、幾度となくそう結論づけてきた。その度なぜかこうやって胸にモヤモヤが残った。 ………そうだもの… 止まってた手を動かした。

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