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甘え偽装
俺が怒っていた理由をとりあえずは理解したアルと立ち話を続けるのもなんだからと俺たちはリビングに移動した。アルのお気に入りのソファに並んで座る。
「……杉田さん、その…」
「……?」
「お、れ…わからないこと多分、たくさんあるけど頑張るから…」
「………」
「頑張って、覚えるから…だから…杉田さんに教えてほしい…」
「……うん…」
なんだか今更な感じがしてちょっとおかしかったけどアルが真剣な顔をしてるから黙って頷いた。それに初めからそのつもりだ。アルは頷いた俺に満足したのか嬉しそうな顔をした。
なんか…犬の尻尾がパタパタしてるのが見える感じする…
とにかく話が終わってひと段落したのでアルの手を離して立ち上がった。
「……よし…じゃあ、ご飯にしよっか…?帰りにスーパーにもよってきたんだ。」
「………」
「お肉がね、安かったからアル好きだしカレーでもどうかなって……」
「………」
「…えっと、アル…?」
「………」
そのまま踵を返して台所へ向かおうとしたらぐいっと後ろ向きに引っ張られた。振り向くとアルが俺の服の裾をつかんでいる。その行動の意味がよくわからなくて首を傾げてアルの名前を呼んでみたけどアルは離さなかったし答えなかった。
「……ん…」
「……?」
アルが俺の服の裾をつかんだままポンポンとソファのさっきまで俺が座っていたところを叩く。
えっと…座ってほしいってことかな…?
アルの行動をそう解釈して再度アルの隣に腰かける。するとアルが寄ってきてまた前みたいに俺の体に長い腕を回して俺の肩におでこを乗せてきた。以前と違ったのは今回は俺の様子を伺いながら恐る恐るって感じだった。
もしかして…甘えられてる…?
少し遠慮がちに肩に乗せた頭を俺の頭にすり寄せるアルが可愛くて胸がきゅんとする。銀相手ではなかったことだ。
アイツならこんな遠慮がちにしないしきっとすぐ服の中に手を入れてくる……
アルの無垢さに感激してそっとその頭を撫でてやると今度俺の体に巻く腕の力をキュッと強めてきた。
子供みたいでかわいいなぁ…
ふふっと思わず笑みがこぼれる。でもそんな風に思ったのもつかの間で、アルはやっぱり銀だった。いつの間にかこっちに体重をかけられてソファに押し倒された。
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