「へぇ〜、そんなことが…」 「はい…でもなんとか仲直りもできたしアルの仕事も元どおり軌道に乗ってくれてほっとしました。」 「それで今日2度目のテレビなんだね。」 メイク道具をカウンターに広げ、コンセントを電源に差し込んでコテを温める翔さんに事の顛末を話していた。翔さんははじめてのテレビ撮影後のアルの仕事がうまくいっていないことに気づいたらしく心配してくれていたみたいだった。今日はアルの2度目のテレビ撮影だけど、会うなり翔さんに声をかけられた。ちなみにアルは今別室で星野さん監督の下今日の衣装を選んでいる。 「………ていうか…もしかして、今回のいざこざの原因ってオレ…？」 「…？え、なんでですか？」 「え…気づいてなかったの…？だってそれ………」 「あぁー!!」 「「!?」」 翔さんの言葉を遮って大きな声がしたと思うとアルが衣装合わせから帰ってきていた。アルは翔さんを見とめて明らかに不機嫌そうな顔をしている。アルはなぜか相変わらず翔さんが苦手らしい。 「えっと…はは…じゃあ、アルくん………ここに座ってもらっていいかな…？」 「………」 「アル、ほら座って」 アルはぶすっとしたまま仕方なさそうに翔さんの前の椅子に座った。ヘアセットとメイクが始まってもアルはじとーっとした目線を鏡ごしに翔さんに向けている。翔さんはなんだかやりづらそうで申し訳なかった。 そしてしばらくすると翔さんのケータイが鳴った。着信元を確認して翔さんがあーって顔をする。 「ごめん、出なきゃいけない電話だ、ちょっと席外す、すぐ戻ってくるね。」 そう言って翔さんは小走りで楽屋から出ていった。 「………」 「………」 アルと2人楽屋に残される。アルはつんっと唇を尖らせて不機嫌なことをアピールしていた。 「もー、アルなんでそんな翔さんの事毛嫌いするの？」 「………」 アルは俺の質問に答えずぷいっと顔を背けた。まぁでも仕事に関して言えば言うことは聞くし、仲良くしなさいと強要する気もない。『翔さんにあまり迷惑かけちゃだめだよ。』とだけ伝えておいた。