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彼の影
「………」
「………」
シーンと静まり返った部屋で横になっていると家の前を車が通ったようでその音がした。体をもぞもぞ動かして寝やすい体制に体をなおす。ぼんやりと隣に視線をやると、そこにはさっきまでエッチな顔してエッチなことしてた杉田さんが眠っていた。すぅすぅと寝息をたてて、首を器用におって俺の首元に顔を寄せている。その腕はまだオレの首に回っていた。
……寝返り打てない…
今日、杉田さんは結局あの後しばらく動いて気づいたらくてぇってなって動かなくなってた。あの杉田さんの気持ちいいとことかいじってあげるとびくってなって『んぁ』とか『ふぁ』とか声を出したけど起きはしなかった。でもオレの首に回した腕は解かなくてちょっと困った。……そんなに嫌な気はしなかったけど
こうやってべったりされるの好きじゃないけど杉田さんはそんなに嫌じゃない…
そう思ってぽふっと目の前にある杉田さんの頭に顔をくっつけると、あの杉田さんのいい匂いがした。
………いい匂いだからかな??
なんとなくしたくなって杉田さんの体に手を回す。杉田さんの体は柔らかくってすべすべしてていい匂いで触ってるとなんだかホッとした。だからいっつも眠たくなる。
「ん…うぅん…」
「!!」
杉田さんの匂いを嗅ぎながら体を触っていると杉田さんが唸ってよりオレにくっついてきた。またなんとなくしてあげたい気持ちになって杉田さんのあたまをぽんぽんしてあげる。さっきもこうやってしてあげたら嬉しそうだった。
「ん、んー?…ふふ…」
「………」
案の定杉田さんは首を傾げてんふふーって寝ながら笑ってた。なんだかその顔を見てると心臓のとこがキュンってなってオレも嬉しくてふふーって顔になった。でも…
「んん?ふふ…ぎ、んー?」
「………」
「……ぎん…」
杉田さんがにこにこして呼んでいたのはオレの名前だった。
………でも、オレの名前だけど…オレじゃない…
さっきまで嬉しかったはずなのに急に苦しくなって杉田さんの頭から手を退けた。
「…ぎん…?」
「………」
すると杉田さんは夢でも見ているのかなんだか不安げな表情になった。杉田さんが『銀』って呼びながらいろんな顔をするのが嫌で杉田さんをぎゅってして顔が見えないようにする。すると杉田さんは『銀』の名前も呼ばなくなってふっと体から力が抜けてまたすぅすぅと単調な寝息を繰り返し始めた。
「………」
………なんか…もやもやする…
そのモヤモヤをかき消すように杉田さんの体に触れ、頭に顔を埋めて目をつぶった。
【再会編 おわり】
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