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幼馴染、吠える

『もぉぉぉぉぉ!!!!学なんで連絡くれなかったの!!』 「ごめんって、ほら…転職とか、引っ越しとか忙しかったんだよ…」 『おれいっぱいRINEしたのに!!電話もしたのにぃ〜!!』 「ごめんって健斗、仕事用のケータイしか使ってなかったから元々使ってたやつ充電切れたままで…」 『もぉぉぉぉ!!』と電話越しで何度目わからない健斗の喚き声を聞いて苦笑いしながら健斗に謝った。その向こうでは『静かにしてください。』と猛の声もした。健斗が地団駄を踏んで猛がなだめてる様子が目に浮かぶ。 アルの仕事も再度軌道に乗ってきたある日、久々に以前自分で使っていたケータイの電源を入れてみた。すると健斗から凄まじい量のメールに電話にメッセージが来ていてそこでしばらく連絡を取ってなかったことに気づいた。アルのことも説明してなかったことに気づき、慌てて電話をかけて今に至る。 散々喚いているがこれでもましになった方だ…電話が通じたばかりの時は死んだのかと思ったと泣き、すごく心配したと怒り、そういえばテレビに銀そっくりな人が出てると興奮していた…電話の向こうに猛もいてくれて本当に助かった…いなかったら『今からそっち行く!!』と言いだしかねない勢いだった… 「……だれ…?」 「あ…アル…ごめん起こしちゃった?俺の幼馴染、アルのことも知ってる人だよ。」 ソファで眠っていたアルも起きたようで俺の側まで来るとまた膝の間に俺を収めるように座って肩に顎を乗せてきた。自分のことを知ってる人と聞いて少し興味が湧いたのか電話に聞き耳を立てている。電話の向こうからは『銀!!学、銀でしょ!!話す!!おれ話す!!』と声が聞こえる。 「…健斗、さっきも話したけどアル…今の銀は…」 『いいの!!話す!!』 健斗にはすでにアル…銀が事故にあって記憶を失ってしまったことや今俺とアルがどういう関係かも話していた。前述通り健斗もアルのことはテレビやネットで知っていたみたいだったので銀と同一人物と聞いてとても驚いていた。 アルに話したいってと伝えてみるとアルは少し首を傾げてから俺からケータイを受け取った。 「……もしも…」 『銀!!』 「……だれ…?」 『銀!!俺だよ!!健斗だよ!!』 「…………だれ…?」 『…ぎん〜……』 2人の会話に聞き耳を立てて聞いていると健斗は事前に聞いていたものの銀が自分を覚えていないことを改めて理解してショックを受けているようだった。始めてアルとあったときに俺を覚えていないと聞いた気持ちを思い出して俺も胸が痛くなった。健斗とアルはそれ以上会話が続かなくなったようで俺がかわった。

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