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応援してくれる人

「もしもし健斗?」 『学〜…銀が俺のこと誰ってぇ…』 「ほら…だから言ったじゃん…」 健斗はぶえぇぇっと不細工な声をだして『猛〜』と猛に泣きつきに言ったみたいだった。健斗が放り出した電話を猛が拾ったんだろう、今度は猛が電話に出る。 『お久しぶりです、学さん』 「猛か、元気?連絡できなかったのごめん…」 そう言うと猛は『心配はしましたけど…こうして連絡もらえたしいいっス』と言ってくれた。 『電話越しで聞いてはいたんでわかってるつもりなんですけど…頬付先輩…記憶が…?』 「………うん…事故で3年間眠ってて…その後の記憶しかないみたい…」 『そうっスか…』 「………」 『………』 シーンと沈黙が流れる。この時俺は黙っていたけれどなんとなく『またかわいそうとか思われてるんだな。』って思っていた。 そんな俺の様子をアルはじーっと見ていた。 『………でも……』 「………?」 『また会えたんですもんね……よかったです。』 「………」 猛が落ち着く声で予想外にそう言ってくれてなんだか嬉しい気持ちになった。 たしかに俺と銀の境遇は悲劇的なものかもしれないし、かわいそうなのかもしれないけれど実際今、俺らは悲しみにくれているわけではないし俺らなりに順調に悲しみを乗り越えて進んでいた。それを褒めてもらえたような気がした。嬉しくてアルの方に視線を向けるけれど会話がわからないアルは首を傾げた。その顔は銀では見れない子供みたいな無邪気な顔だった。 ……アルは記憶がないけどそれでも銀なんだ…きっと…いつか…… 今はそう信じている。 猛素直ににお礼を言うと今度は電話の向こう側でバタバタと騒がしい音と猛の『わっ』と驚く声が聞こえた。 『学!!』 「健斗?どうし…」 『おれも別に怒ってるんじゃないから!!銀と学が元気で嬉しいと思ってるから!!うそ、連絡くれなかったしちょっとは怒ってる!!でも同じぐらい嬉しいからっ!!』 「……ありがとう健斗…」 『…うん……今度また時間できたらそっち行くから今度は銀も入れて4人でご飯食べようね。』 「…そうだな……」 そのあと少しだけとりとめのない話をして電話を切った。なんだか直接応援してくれる人がいるのは心強かった。 うん…よしっ… 「アル、また明日からも頑張ろうね。」 「……?…ん…」 アルは不思議そうな眠そうな顔をしていたけれどそう返事をしてくれた。

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