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新たなお仕事
「やったねぇ!!おめでとう !!」
「えっ?」
「………」
「っう…ぐずっ…ほ、ほんどに…ほんどによがったぁぁぁ…」
星野さんは今度はいきなり顔を緩ませたかと思うと、次の瞬間には俺とアルにしがみついて泣き出した。
ほ、星野さんの情緒がやばい… !!
そばにいる山田さんに助けを求める視線を送っても普段通りのにこにこした笑顔を返されるだけで助けてはもらえなかった。ちなみにアルは現実逃避のつもりなのか単純に眠いのか…多分後者だけどまた俺の肩に頭をのせて寝に戻っている。2人分の体重が俺にかかっていて重たい…
「よがっだぁぁぁ…よがっだよぉぉぉぉ…」
「ちょ、ほ、星野さん…?どうしたんですか…?」
「んぶぇえ?」
「わっ、きたな…じゃなくて…星野さん…鼻水出てます……」
「うぇ…ご、ごめん…」
なんとか星野さんをなだめ離れてもらい、落ち着くまで待った。
……ほ、星野さん…なんか…大丈夫かな…情緒とか……働きすぎなんじゃないかな…
しばらく星野さんはなにかを思い出しては鼻をグズグズさせてたけれどそのうちいつもの星野さんを取り戻した。
「さっきはごめんね、嬉しくてちょっとテンションが上がってた。」
「…ちょっと……」
「そう、ちょっとだよ。」
星野さんは指の間を狭めてみせた。
あ…これ社長が前アルの素行についてごまかす時にやってたやつ…
「ここじゃなんだし…移動しようか?社長にもまだ直接は伝えてなかったからついでだし社長室で…」
「あ、はい…」
そう言って踵を返した星野さんについて行った。山田さんも社長室に戻るみたいでついてきた。アルは…なんかすっごいふにゃふにゃしながらかろうじてついて来ている…仕方ないので手を引いてやった。
「…あら、みんな一緒に来たのね。おはよう。」
社長室に着くといつものように赤いドレスを着た椿さんがいた。椿さんも話の内容は知ってるらしく星野さんに『よかったわね』と声をかけている。なんだかこのままだとなんの話なのか聞きそびれてしまいそうな感じがしたので口を開いた。
「あの…なにかあったんですか…?」
「あ、ごめんね、そっか杉田さんとアルにはまだ言ってないもんね。」
「……?」
社長室に着くなりソファに寝転がりに行こうとするアルを引き止めて次の言葉を待つ。星野さんも社長も山田さんもにっこりしてこっちを見ていた。星野さんが満を持して口を開く。
「アルにドラマのオファーが来たんだよ。」
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