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演技力

「アル、あなた演技はできるの?」 「……ん?…んー…」 椿さんの質問にハッとしてアルを見るけどアルは首を傾げて眠そうにしている。 演技…たしかに……アル、正直そういうの得意じゃなさそう……いや…でも元は銀なわけだし…アルにもたまに銀みたいなスペックのよさを感じるときあるし…できるのか…? アルのよくわからない返事を聞いた椿さんはうーんと少し考えてから自分の机から何か冊子を持ってきた。 「じゃあ…ちょっとだけやってみましょうか。アル、これ今やってるドラマの台本よ、1ページ目の女の子との絡みをせっかくだしやりましょう。」 「んん?…うえぇ…字、多い…」 「相手の役は……そうね学やってちょうだい。」 「えっ、お、俺ですか!?女の子だし社長がやった方が…」 「……うふ、お願いね学。」 冊子が俺とアルの手に手渡される。俺の抗議は完全に無視されていた。まさかこんな形で自分に飛び火すると思ってなかったから慌てた。 演技なんてできないし…し、しかも女の子の役… そうは思ったけれど山田さんも星野さんももう俺とアルから距離をとって完全に見る側に徹するつもりでいるし。アルはアルで人前で演技すること自体は特に嫌だとか恥ずかしいとか思わないらしく字の多さに悪態はつくものの台本に目を通していた。 俺も仕方なくアルを見るためのものだから、ただ読むだけでいいんだと自分をなだめ、台本に目を落とす。 話の内容としてはちょうど男の子が女の子に告白するというシーンのようだった。ドラマだったなら一番の山場といっても過言ではないシーンだ… 何度か台本を読み返す。 「…じゃあ…そろそろいいかしら?…始めましょう。」 「………」 「……ふぁ…ふ…」 ただの相手役の俺がこんなに緊張しているのにアルはというとあくびをしていた。 …や、やっぱり自信あるってことなのかな…?ま、まぁ、銀は演技とかそういうの上手そうだったもんな… 自分がこれから演技することへは相変わらず不安しかないけれど余裕そうなアルの様子に少しだけ安心した。 「じゃあいい?よーい、スタート!!」 椿さんがぱんっと手を叩きスタートの合図を出した。

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