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放送テロ
社長が手を叩き演技の開始を告げた。
まずは俺のセリフからだ…
ごくっと唾を飲み込み台本に目を落としたまま口を開く。
「わ、わ…私、しってるんだ、からあぁ…!!こ、この、間の休み…さ…さくら先輩と、で、で…でぇとしてたってぇ、こと!!」
いくら俺の演技は今回全く関係ないと言われても気にせずにはいられない演技力のなさだった…
…のっけから噛むし…声は上ずるし…なんかイントネーションおかしいし…
でも落ち込んでる暇はない、次は肝心のアルの演技だ。自分のお粗末な演技をさっさと忘れてしまいたいこともあり赤い顔を振って、アルに視線を向ける。アルは台本を見下ろしたまま口を開いた。その眉間には相変わらずシワが寄っていて普段通りのアルにように見える。
あ…あれ…?
「あれはー、せんぱいにたのんでぷれぜんとをさが…あ…えらんでたんだよー…」
「………」
よ…読み直した…
「………」
「……学…学の番よ…」
「えっ、あっ、は、はいっ……えっと………ふ、ふんっ…だ、誰へのプレゼントだっていうの…!あ、アクセサリーだなんて…!!」
アルの様子にあっけにとられていると椿さんに声をかけられ慌てて続きを読んだ。途中でちらっと星野さん達の方へ視線を向けたけど星野さんもさっきの俺みたいなあっけにとられた顔をしていた。
「おまえのだよー、おどろかせようとおもってこっそりかってきてたんだー」
でも当のアルはなんとも思っていないのかそのまま同じ調子で喋り続ける。凄まじい棒読みな上に、よく言って『音読』だ…俺がいうのもなんではあるが決して演技ではない…
今のセリフ…俺ドラマの本編の方で見たことあるけどもっときゅんきゅんするシーンだったはずなのに……なんでだろう……きゅんきゅんっていうか…動悸が…
結局その後も何度かやりとりがあった末に終了したけれど、話し合うまでもなくアル以外全員がことの深刻さを理解した…星野さんは気分が悪くなりとうとう立っていられなくなってソファ座らされたほどだ。
でもせっかくいいお仕事だったのにこれじゃあ絶望的だもんな…
さっきのアルの演技を思い出す。まだ小学生の方がマシな演技をしそうだ…あれが地上波で…しかも金8で流れるなんて…事故を通り越してもはやテロだ……
「「……はぁ…」」
「…?」
俺と星野さんのため息が被り、アルだけは全員の顔を見回して不思議そうにしていた。
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