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大根入りのカレー
「………」
「………」
今朝は珍しく言うことを聞いてさっと起きてくれたアルをリビングまで誘導する。そっぽを向いて、唇を尖らせ、目を合わせてくれないあたりまだ昨日のことを怒ってるみたいだった。
……悪いことしちゃったな…
でもそんなアルもリビングに近づくと鼻をヒクヒクさせてこっちを向いて首を傾げていた。アルをテーブルに座らせ、キッチンに向かう。
謝罪の気持ちも込めて時間かけて作ったし多分美味しい……と思う…
昨日の夜あの後深夜営業のスーパーに出向いて準備した大根入りのカレーをアルの前に出した。アルは予想した通り驚いた反応を示してくれる。目をまん丸にしてカレーを凝視していた。
「…前言ってたでしょう?大根入りのカレーだよ。今朝はデザートにアイスもあるよ。」
「………」
「だから…だからまた今日から練習頑張ろうね…?」
「…!!」
俺の発言というより朝から出てきた普段と見た目の違うカレーに興味津々だったアルはここでやっとこっちを向いた。アルと今日初めて目が合う。改めて昨日言うと決めた言葉を口にした。
「…………アル…昨日の…ごめんね……」
「………」
「……そういうつもりじゃ無かったんだけど…下手くそだからやめたほうがいいって言ったように聞こえたよね…?」
「………」
「……実際…その…あ、あんまり演技…上手…ではないなとは思ってるんだけど……まだ練習始めて1日目だもんね…ごめんね…」
「………」
「……これからはちゃんと応援するし、アルが上手になれるように俺も頑張るから。」
「………」
そう言うとアルはしばらくじーっとこっちを見ていたけれど少しするとスプーンを持って俺が出したカレーを食べ初めた。そしてそのままの勢いで三分の一ほど食べ終えたところでこっちを見て少し照れくさそうに口を開いた。
「………がんばるんでしょ……じゃあ、杉田さんも一緒に食べてよ……」
「!!」
「…………おいしい…」
「あ、ありがとう!!」
そう言うとアルは満足そうに笑ってまた黙々と食べ始めた。一気に空気が柔らかくなったように思えた。俺も慌てて自分の分をよそって食べ初める。テーブルに着くと向かいに座ったアルと目があってアルがちょっと照れくさそうに『美味しいよ』ってもう一度言ってくれた。
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