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伸び悩むラブシーン

「はいはい、和也もその辺にして顔洗ってらっしゃい。」 うええええっと泣きながら支離滅裂に今の気持ちを伝えようとする星野さんを社長が手を鳴らして制す。アルは口の端がうずうずとしていてとても嬉しそうだった。そしてそんなアルを見れて俺も嬉しかった。 社長もニコニコしていたが、ちょうど星野さんが顔を洗いに社長室から出て言ったのを機にスッと真顔になってこっちに向き直った。 「さぁ…これで会社としてはドラマの出演にOKが出せるわ。アルの演技も始めの時に比べたら見違えるほどよくなってる……ただ…俳優や場数をこなした他のタレントに比べたらまだまだよ。」 「……はい…」 「………」 「アルの演技、けしてうまいわけではないわ。厳しいことを言うようだけど……特にラブシーンがぎこちなさすぎる。」 「………」 社長の正しくも厳しい意見にいつのまにか背筋が伸びる。アルはもしかすると厳しいことを言われてショックでふてくされてしまうんじゃないかと思ったけれどアルはじっと黙って聞いていた。 ラブシーン…たしかにアルのラブシーンはぎこちない… 実はこれは俺も思っていたことだった。そして先生にも何度か言われていた。 アルは容姿も綺麗でただの演技でも華があるけれど逆にそのせいで浮いた演技をしてしまうと悪い意味でも目立ってしまう。ラブシーンはその最たるものだった。アル自身、俺や先生に言われてそのことを自覚はしているものの『好き』という感情に疎いせいなのか、なかなか上達しなかった。 「本番までも継続して練習をしてちょうだい。ラブシーンに関しては世間も注目して見るシーンだし、むしろそこだけは『観れるレベル』じゃなくて『魅せるレベル』にしてもらいたいところだわ。」 「………」 「………」 社長の意見はもっともだった。

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