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デートのお仕事
「デート?そうねぇ…うん、いいんじゃないかしら?」
「……社長まで…」
後日社長にピエールさんの提案について伝えると好意的な返事が返ってきた。
あまりにも二つ返事でOKされてしまったので少々驚く。
ピエールさんの提案とは俺とアルが擬似恋人としてデートに行くというものだった。恋人同士がするようなことをしたらきっとアルも『愛』がわかると熱弁していた…
……俺は半信半疑というか…本当にそんなことでわかるのかって思ってるけど…
でもその案を聞いた翔さんも『いいじゃん!!』と乗り気だったし、その場では何か他の案を…と言うことができなかった…
「いいじゃない?アル普段あまり外出もしないんだし、来週確かオフの日があったからその日にして来なさい。デート」
「………」
「なぁに?不服そうね?行きたくないの?」
「……そういうわけじゃないですけど…」
社長が不思議そうに尋ねてくるけれど、やっぱり本当にそんなことでアルのラブシーンがよくなるのかと疑っていた。アルはその後も毎日練習に励んでいる。そこで俺が『遊びに行こう』って誘うなんてなんだかアルの頑張りに水をさすようで気が引けた。
「はぁぁぁ〜…」
すると俺の表情からなにかを読み取ったのか社長が大きなため息をついた。どういうため息なのかがわからなくて首をかしげる。社長は芝居掛かった様子でデスクから立ち上がるとゆっくりと喋りながらこちらに歩いて来た。
「…学…あなたわかってないわ…」
「…?」
「アルに『愛』を教えるのがアルを『愛』するあなたじゃなくてどうするの!!」
「!!」
社長にビシッと指を刺されて強い口調でそう指摘される。社長の背後にピシャーン!!って効果音とカミナリの絵が見えた気がした。そしてあまりの気迫に思わず『ハッ!!』って顔をしてしまったが後から思えば多分、社長は面白がっていただけだった…やられた…
「学、あなたアルを愛しているのよね??」
「あ、愛!?…あい……えっと…」
「愛していないの!?」
「あ、愛してます!!」
社長の気迫に負けて思わずそう答えてしまう。
…いや、思わず答えてしまうっていうか全く嘘ではないんだが普段なら恥ずかしいし絶対言わないのに言わされてしまった…
この時ずっと後ろに控えていた山田さんがふふっと笑っていたことにちゃんと気づいていればもうちょっと流されずにすんだのかもしれない…
「アルのこと、大事に思っているのよね??」
「は、はい!!」
「じゃあデートも行くわね!?」
「はい!!………え?はい?」
そういうと今の今まで険しい顔をしていた社長がふふっと笑った。そこでなんか色々正気に戻ったがその時にはもう遅かった。
………あれ…?
社長は凄艶な笑顔を浮かべていた。
「じゃあ、決まりね。」
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