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デートのお誘い
「…デート?デートって?」
その日帰って早々台本を読み出したアルに罪悪感を感じながらデートのお誘いをしてみた。社長は結局あの後とっても乗り気だったし、山田さんには会社のホームページに載せる用のアル写真を撮ってきてねとお願いされた…。
「デート…は……その、遊びに行ったりするんだよ…一緒に…」
「…誰と…?」
「今回は俺と…」
「……ふーん…」
そういうとアルは首を捻ってから少し何かを考えていた。
や、やっぱりめんどくさいなって思ってるのかな…?……でも正直ここで断られるとちょっとショックなんだけどな…とか…
沈黙に耐えられず思わず口を開いた。
「そ、その…ドラマのラブシーンのためだから!!……こ、恋人っぽい感じがわかればラブシーンでも活かせるんじゃない?って社長とかが…」
「………」
「で、でも…嫌だったら俺が社長に言っておくし…今練習で忙しいのに休みの日にわざわざそんな…」
「いいよ」
「……え…」
「遊びに行くんでしょ…?杉田さんと…いいよ、行こ、行きたい。」
「………」
断られた時のダメージを減らそうとまくし立てていた俺の言葉を遮ってアルはそう言うと、それからこっちをみてふふっと笑った。
「楽しみ…」
「………」
アルはそのあとすぐにくあっとあくびをして『眠い…』と呟くとソファで丸くなってしまったが俺はその場に立ち尽くしていた。心臓がドッドッと音を立ててかぁっと顔が赤らんでいくのが自分でもよくわかった。慌てて頬を抑えアルに背を向ける。
……やばい…なんか…嬉しい…
顔が暑くて無意識のうちににやけてしまってそんな自分になんだか照れていた。
……アル…楽しみって言った…あのアルが…行きたいって…
大人気ないし、期待しすぎちゃいけないって思う自分がいるのに顔が緩むのを堪えられなかった。
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