121 / 172
変装
そしてお休みの日…
「よし…!!じゃあ行こうか!で…デート…!!」
「………」
俺はアルを誘った日から実はこの日を楽しみにしていた。
……すっごいひさびさに新しい服とか買っちゃった…
変に浮き足だった気分のまま新品の服を着て玄関に向かう。そんな俺をアルは不服そうな顔で見ていた。不機嫌をあらわにした声を出す。
「……杉田さん…これやだ…これも…」
「あ、アルダメだよ!!」
「やだ、暑い、苦しい、見えない…」
「そんなこと言ったって…流石にそのまま外歩くのは…」
「………」
アルは何度も繰り返したこの問答にまた嫌そうな顔で唇を尖らせる。
ちょっとかわいい…けどそうじゃなくて…
アルが嫌だと言っているのはマスクと帽子とサングラスのことだった。仮にも芸能人だし最近何かと声をかけられることも増えたので変装のつもりでアルに身につけさせたものだった。
「最近ちょっと外歩くだけでも声かけられるようになったでしょ?嬉しいことだけど今日みたいに人のいるところ行くときは気をつけないと…ただでさえ目立つんだから…」
「………」
「…そんな顔したってダメだよ、星野さんにもお願いされてるんだから…」
「…わかった…」
アルは仕方なさそうにマスクとサングラスをつけて帽子を被った。
………でもこれはこれでやたらでかい不審者って感じがしないでもないけど……
「……アル…やっぱりサングラスはいいや…」
「……?そう?」
こうして俺とアルは家を出た。流石に公共の交通機関を使うのは迷惑になったりするかもしれないので車を使う。アルはいつものように後ろの席に乗り込むと外を眺めながら口を開いた。
「……それで…杉田さんこれからどこ行くの…?」
「そうだなぁ…アルはなにかしたいことある?行きたいとことか…なかったらちょっと行ってみたいところがあるからまずそこに行こうかなって思ってるんだけど…」
「……ふーん?わかった。」
実は今日俺にはアルを連れて行きたいところがあった。仕事の一環みたいな感じで行く外出で私情を挟んだ場所に行くのは気が引けるけどアル普段は移動中は寝てるし、外に行きたがらないからなかなか行くチャンスがなかった。
…もしかしたら何か思い出してくれるかもしれないし…
早速そこへ向かおうとハンドルを切った。
ともだちにシェアしよう!