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ポプラ並木
車を走らせること20分…
俺とアルは目的の場所に到着した。車から降りて並んで歩く。日曜の朝なこともあって人はまばらで俺らと同じようにここに散歩をしに来た人がほとんどのようだった。
アルは『アル』にとっては初めての場所にきょろきょろと周りを見回していた。ドキドキとその様子を黙って見守る。そしてアルは首をひねると口を開いた。
「……ここどこ?」
「………」
内心がっかりしてしまうがそれが表情に出ないように気をつけた。
………ここもダメか…まぁ…実際いたのはほんの数ヶ月の間だったもんな…
道の両端にはポプラの木が植わっていて、綺麗な並木道だった。
銀が俺に見せたいって言ってた…
「……ここはね学校だよアル。T大って言ってすごい優秀な大学なんだよ…」
「……?ふーん…」
アルは俺の説明を聞いて、また興味深そうにまわりを見ていた。
表に出さないようにしようとしてもどうしてもがっかりせずにはいられなかった。
……ここは銀の通っていた大学だ……遠距離恋愛になってしまうとしても、その先の将来、苦労が少なく一緒にいられるようにって銀が頑張って入った大学だった…
「………」
「……?」
せっかく綺麗な並木道だったのに下を向いて歩いていた。
……別にこれで思い出してくれるって思っていたわけではない…思い出してはくれないかもしれないとも思っていたし、覚悟もしてた、それでも銀の記憶を取り戻すための大事なきっかけがまたダメになってしまったような気がして落ち込まずにはいられなかった…
「…?杉田さん?」
「………」
アルが俺の様子がいつもと違うことに気づいて声をかけてきたけど俺は落ち込んでしまっていて返事ができなかった。
それからアルはしばらく黙っていたが、少し歩くとまた口を開いた。
「……ねぇ…もしかしてここってオレが行ってた大学…?」
「…!!あ、アル、思い出したの??」
パッと顔を上げてアルを見る。突然顔を上げた俺にアルは一瞬驚いた顔をしたがそれからちょっとだけ申し訳なさそうな顔で笑って首を振った。
「ううん…でもここどこ?って言ったら杉田さんへこんでたしそうかなって…」
「……」
「……またがっかりした…?」
「………」
顔を覗き込んでそう尋ねるアルに俺はまた返事ができなかった。
がっかりは正直したけれどアルは何も悪くない…
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