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また来ようね
ドラマのシーンのためにって杉田さんにお出かけに誘われた。普段あまり行きたいところもないし、したいこともないから必然的に外に出ることは少ない。でも杉田さんが一緒に行こうって言うしなんだかちょっと楽しいかもって思った。だからいいよって言った。
「……ここどこ?」
「………」
そして当日、杉田さんが行きたいところがあると言って連れて来てくれたのはなんだか自然が豊かな感じのところだった。道の脇に大きな木が植わってて杉田さんと並んでそこを歩いた。
話によるとオレの昔通ってた大学だったんだって。杉田さんはオレにいろいろ思い出して欲しくてここに連れて来たみたいで、オレがなにも思い出してないと気づくととてもがっかりしてた。
……杉田さん…自分では気づいてないと思うけどよくこういう顔するからオレもわかるようになってきた…杉田さんがこういう顔するのって『銀』が絡んでるときなんだ……それできっと…オレが思い出せてない何かがあるとき…
はじめはこの顔を見るたびまたなにかよくないことをしてしまったのかと不安になっていたけれど、最近はもう慣れた。
……でも慣れたからといってこの顔をされても平気ってわけじゃない…なんだか……かわいそうだなって気分?かな?…になる…
そんなことを考えながらなんとなく思ったことを口に出した。
「………でもさ…」
「……?」
「……きれいなとこだね?ここ。」
「……え…?」
「…なんかいい感じ……昔のオレも多分杉田さんと来たかったと思う……」
「………」
俯いていた杉田さんが顔を上げてこっちを見ていた。なんとなくそうしたくなって笑って見せると突然杉田さんの目がうるってなって、目の端から涙が落ちていった。
正直すごくびっくりした…泣かれるなんて思ってなかった。
「す、杉田さん?どうしたの…?そんなにがっかりしたの…?」
「………」
慌ててそう聞くけれど杉田さんは首を振るだけでなにも言わなかった。
……そんなにがっかりさせること言ったのかな…オレ…
なんとかしないとと思ったけれどどうしたらいいのかはわからなくてただ周りでじたばたしてた。でも少しすると杉田さんは顔を拭ってスンスン鼻をならしながら顔を上げた。もう涙は出てないみたいでそれを見てホッとした。
杉田さんがしんどそうな顔してたり、泣いたりしてるの見るの、なんかいやだもの…
しかも顔を上げた杉田さんは泣いたせいで目が赤かったけどもうがっかりした顔はしてなかった。代わりにちょっとだけ恥ずかしそうにえへへって笑った。よくわからないけれどそれを見て胸のとこがきゅうんってなった。
「…ごめんねアル、突然……ちょっとなんか…思い出しちゃって…」
「……もうがっかりしてない…?」
「ふふっ、大丈夫だよ…してないよ…」
そう言って杉田さんはまた笑った。
「……じゃあ…ちょっと長居しちゃったけど次のところ行こっか?もうちょっとデートらしいことしよう。」
「あっ…杉田さん…」
「…?」
なんだかスッキリしたような杉田さんが今来た道を戻ろうと踵を返して歩き出した。思わずそれを呼び止める。
本心だったし、なんだかこう言えば杉田さんが喜んでくれる気がした…
「……また、こようね…ここ…」
「!!……うん…そうだね…こようね…」
杉田さんはまたびっくりした顔をしたけど笑ってそう言ってくれた。
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