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デート(仮)

そこからのデート(仮)は順調だった。T大をあとにした俺とアルは一緒に映画を見て、クレープなんか食べたりして、ゲームセンターにも行った。高校の時、あまりたくさんではなかったけれど銀とそうして過ごした記憶を頼りにデート(仮)をした。 アルはクレープとゲームセンターがひどく気に入ったみたいで、アイスもケーキもクリームものった豪華なクレープを幸せそうに2つも食べていたし、ゲーセンはなかなか離れようとしなかった。銀はクレープはいっつもバターを塗ってちょっと砂糖がかかっただけのやつだったし、ゲームセンターも俺や健斗のしたいのに付き合ったり、プリクラで俺を茶化して喜んでただけだったからなんだか新鮮だった。 「ね、杉田さん、帰りもさっきの買っていい?今度はね、いちごのにする。」 「クレープね、もう2つも食べたじゃん。」 「…今日だけ……」 「それは周りの人が許すんであって自分で決めることじゃないの。」 「……ケチ…」 「……2個食べたこと星野さんに言うからね。」 「………ごめん…ごめんなさい…」 アルの変装も功を奏してるみたいで今のところ遠巻きにチラチラ見られたりしたことはあったけれど声はかけられていなかった。 ……これ、俺が女の子だったら炎上とか…そういうのになってたのかもなぁ… 男でよかったと、このときはそう思えた。 1日も終盤に差し掛かってそんな会話をしながら歩いているとたまたま本屋さんが目の前に見えてきた。そこでアルが乗ってる雑誌がいくつか発売されていることを思い出した。 「…ねえアル、ちょっと本屋さん寄ってもいい?」 「いいよ?」 本屋に入り、もの珍しそうにキョロキョロするアルに本屋の説明をしながら雑誌コーナーに向かう。アルは自分の載った雑誌が本屋に並んでいるのは初めて見たようでこれにも興味深そうにしていた。雑誌を数冊選んで会計に向かう。途中でピエールさんが独特のポーズでなぜか表紙を飾る雑誌もあったのでそれも買うことにした。 「あぁぁ!!見て!!今月のyan-yan!!アルくん出てるんだった買うの忘れてたぁ〜」 「あぁ!!かっこいいよね私めっちゃ好き!!なんか、今度の金8、出るらしいよ〜」 「えっ!!まじ!?毎週録画予約しなきゃ〜!!」 会計のためレジに並んでると突然さっきまで俺らがいたところから声が聞こえてきた。

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