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ファンサービス
「……ねぇ、ちょっと…聞きたいことあるんだけど……」
「…え?はい…?……えっ!?」
「えっ!!ねえちょっと…うそ!!」
急にいなくなったアルの声と女子高生が驚く声が聞こえて慌ててそちらに急ぐ。女子高生の大きめの声に店内にいたお客さんの何人かがそちらを見ていた。
………ものすごく嫌な予感がする……
そしてアルが載っている雑誌があるスペースを覗くと案の定女子高生に声をかけているアルがいた。マスクまで外して悪い予想は的中していた。
「……ねぇ…オレのこと好き?…なんっていったっけ…あ、ふぁん?ふぁんなの?」
「えっ…あっ…」
「アワワワ…」
「……?ねえ?聞いてる…?」
あまりのことにあっけにとられていたらアルは驚いて口の聞けない女子高生に詰め寄り出した。自分が誰だか気づいてないのかもと思ったのか帽子にも手をかける。
……あ…まずい…
「ちょっと!!アル!!」
「んあ、杉田さん…」
でも俺の呼びかけはもう手遅れでアルの見事な銀髪が帽子から流れ落ちていた。しかもまた俺が慌てて声をかけたのも良くなかった。
「…アル…ねえアルって言った…?」
「えっ…あれ、本人?うそっ!!」
周りが急にざわざわしだす。俺が大きな声を出してしまったせいもあってアルは一躍注目の的になってしまった。徐々に周りに人が増えている。早くこの店を出た方が良さそうだった。
「あ、あの…ある、アルジェントさん…!ふ、ファンですっ!!」
「おぉ…ありがと…うれしい…」
「あ、あぁぁ…どうしよう握手しちゃったぁぁぁぁ!!」
「えっ!!ずるい私も!!」
「え、待ってよ私も!!」
アル本人はというと周りの様子に気づいているのかいないのか呑気に女子高生と握手をしていた。ファンだという人となかなか直接会う機会がないこともあってアルは『おぉ…』と顔を輝かせ感激しているみたいだった。
「……アル…もう行こう…」
「え…杉田さんでもこの子達サインって…」
「えっサイン??アルサインなんてあるの…?」
「…ないけど……なまえでしょ…?」
「って…そうじゃなくて急がないと〜…」
いつのまにか周りに集まっていた人は人だかりになり初めていた。アルは女子高生たちの携帯ケースにゆっくりと「ある」とひらがなで名前を書いてる。
あぁ…サインとかあんまり人の多いところでは収集つかなくなるからさせないようにねって星野さんに言われてたのに…
「ん…書けた…」
「!!よし!!アル行くよ!!」
「あ、あの!!ドラマ応援してます!!」
「絶対毎週見ます!!」
「友達にも進めます!!」
「ん〜…ありがと…」
女子高生たちに手を振る呑気なアルを引っ張り人の薄いところを縫って店の外に出た。アルだと気づいた人たちがわらわらとついてくる。
「……?あれ?杉田さん…なんか人多くない…?」
「……アルのせいだよ…ほら、早くマスクと帽子して…」
「…?」
早歩きでアルをひっぱりながらどうしたらいいか考えた。
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