130 / 172
休憩()所
「……わぁ…おっきい部屋?だね?」
「………」
「……杉田さん…?」
「………」
勢いに任せて入ってしまった…ラブホテルに…
あぁぁ…っと頭を抱える。
しかもアルがラブホテルに男と二人で入っているところなんて誰かに見られるわけにもいかないと慌てて一気に部屋まで来てしまった…
脳裏にはかんかんに怒る星野さんの顔が浮かんだ。
………ごめんなさい…星野さん…
俺が部屋の入り口でうずくまって懺悔している間アルは興味深そうに部屋をうろうろしていた。
「みてみて杉田さん大きいテレビもあるし、ベットもついてるよ………一個しかないけど……」
「………」
アルはぼふっと広いベットに体を投げ出すとあぁぁ…と声を出していた。ここ最近忙しくしていたし、普段歩き回ることも少ないから疲れたのかもしれない。なんだかそうやっていつも通りのアルを見ると和んだ。
……そうだよな…あのときはこうするしかなかったし……それに男と二人でラブホテルの前にいるところを見られる方がまずいもんな……ラブホテルだからって変に意識しなくても…ただ休憩して帰ればいいんだし…
穏やかな気持ちでそう思いなおしてそばにあったソファに腰を下ろす。アルはベットでゴロゴロしながらテレビのリモコンをいじっていた。
まぁ…入ってしまったものは仕方がない…たしかに部屋まで来て仕舞えば静かだし誰にも見られる心配はない、ほとぼりが冷めるまでじっとしていよう…
『明日の天気は…』『今日夜9時からは…』『●×製薬の…』
「……んー…」
アルがカチカチとリモコンでチャンネルを変えていく。テレビ番組の音声が次々に切り替わっていった。
『毎週金曜8時は…』『の・ぼ・り・べ・つと言えば!!…』『…ッア…あぁん…んぁぁ…!!』
「……!?」
「…おー……」
でも突然テレビからいかがわしい声が流れてきて慌てて顔をテレビに向けた。画面には裸の女の人が悩ましい表情を浮かべている様子が映っている。かぁぁっと顔が暑くなっていくのを感じた。
ら、ラブホテルだからAVが入っているのか…
おお…っと声を上げてAVを鑑賞するアルから慌ててリモコンを取り上げチャンネルを変える。アルはえーっと不機嫌そうだった。
ともだちにシェアしよう!