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よそとうち

こうして話は冒頭に戻る。4枚チケットがあって社長と星野さんと山田さんはいけないとなると誘える人は限られてくる。翔さんやピエールさんなんかの顔も浮かんだがきっと2人も忙しいはずだ。それに一緒に温泉旅行となるとなんだか違うような気がして、ダメで元々で健斗と猛に電話したのだった。 家でチケットを眺めながら悩んでいた時のことを思い出す。意外にも二人を誘う案を出してきたのはアルでうんうん唸る俺に「杉田さんの友達誘えば?」と言ってきたのだった。そして奇跡的に二人ともそこの休みが開いていて一緒に来れることになった。 「それにしても…杉田さんから連絡来た時は突然温泉に行こうだなんて驚きました。」 「あー…突然ごめんな。特に猛は今年国家試験だし忙しかったろ?」 「いえ、勉強も予定通り進んでたし、息抜きしたかったのでありがたかったです。」 「…そっか」 猛は笑ってそう言ってくれた。猛の目線が健斗を追う。健斗はアルと並んで何かのお菓子が焼きあがるところを眺めていた。その様子を眺めながら猛が口を開く。 「それに…先輩ずっと前から一緒に旅行行きたいねって言ってたんす…」 「……」 「でもなかなか準備とかのことも考える間もないぐらい忙しくて毎回流れちゃってて…なんで良かったです。」 と猛が少し申し訳なさそうな言い方をした。俺は大学に上がった頃からそれ以前ほど頻繁に二人に会えてなかったから、何だかずっと仲の良さそうな二人の関係にも陰りがあるのかと思っておどろいた。でもよそはよそで大なり小なりの問題は抱えてるのかもしれない。 「ねー!!そろそろいこー!!」 その時健斗が俺らを呼んだ。お菓子を焼くのを見るのはもう飽きたらしい、あるもその後ろに立っていた。猛の少し珍しい表情はすぐに引っ込んで「目立つから大きい声出さないでください」なんて言いながら健斗の方に行ってしまった。 「………」 ちょっと離れたところに健斗と猛とアルが並んでいる。猛はまだアルとの距離感を測りかねているようで二人で話してる時なんかはぎこちなさがあった。それとは対照的に始めて電話した時はあんなに戸惑っていた健斗はもうアルと馴染んだようで仲良くしている。 高校の時…デートがしたいってわがまま言ったら銀がスーパーの福引で温泉のチケット当てたことがあったなぁ… そんなことを思い出していた。

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