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えぇぇぇ
「うわああああ!!大きい!!大きいね!!」
「先輩!しーっ!」
観光がてら寄り道をしながらやっと今日泊まる予定の旅館に着くと健斗がそう声をあげた。猛が止めているがたしかに声が漏れるぐらい大きく立派だった。広くて天井の高いロビーに、窓の外には立派な日本庭園が見える。ロビーで待っている間も飲み物が出てきたりとサービスまで至れり尽くせりだった。
さ、さすが社長宛…
思わず宿泊券の入ったカバンをきゅっと抱き寄せる。すると突然服がくんくんっと引っ張られる感覚がした。振り向くと変装して不審者の様相のアルが立っていた。
「杉田さん杉田さん、おっきいね」
「そうだね…今日からここに泊まるんだよ。」
「…ここに?」
アルは見慣れない場所に落ち着かないのか周りをキョロキョロ見回し、鼻をヒクヒクさせ、長い手を伸ばしてはやたらといろんなところに触れていた。その間も俺の服を握っていて少し可愛いかった。
アルの記憶の中では初めての遠出だもんな…もしかしたら不安なのかも…
「大丈夫だよ。部屋は俺と一緒だし。たのしみだね。」
「んー、うん…」
アルにとっては初めての経験で緊張しているように思う。緊張というよりそわそわするようだ。
「お部屋のご準備ができましたのでこちらへどうぞ。」
そうこうしているうちに旅館の仲居さんに声をかけられ部屋へ案内された。高校の時は旅館側の手違いではあったけど4人部屋に泊まったが今回は2人部屋を2つにした。俺らももう大人だし配慮のつもりだった。あと単純にアルにとっては2人と始めて会うわけだしそんな相手とずっと一緒なのは疲れるかなと思ってだった。
「えぇえ〜?みんな一緒じゃないの〜?」
部屋の前でどっちの部屋がいいか猛と健斗に尋ねると健斗がえぇぇっと不満を漏らした。
「えぇぇ、俺も銀といっぱい話したいよ〜」
「せ、せんぱい…」
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