160 / 172
頭ぽん
「えぇぇ、俺も銀といっぱい話したいよ〜」
「せ、せんぱい…」
健斗がアルのことを銀と呼ぶのを聞いて何だか懐かしさを感じてドキッとした。
健斗はうわぁーんと大げさにアルにしがみつき、まだアルとの距離感を計りかねてる猛が「すみません…」なんて謝りながら健斗を引き剥がそうとしている。
「…?」
「やだぁ〜猛はなしてぇ〜ぎん〜」
アルはそんな2人の様子をキョトンとしてみていた。もしかしてまた俺とあった時みたいに「銀って呼ばないで」と健斗を冷たくあしらうかと思ってひやひやしたがそんな俺の予想に反してアルのとった対応は意外なものだった。
アルの長い腕がそっと持ち上げられ健斗の頭にアルの手がポンっとおかれる。健斗が目をパチクリさせてアルを見上げた。
「いっぱい話せるよ?」
アルは健斗と目が合うとそう言ってなでなでと健斗の頭を撫でた。何だか今までにはなかった行動で意外な気持ちになった。猛はなにか恐ろしいものを見たような顔をしている。
「うん、そっか…そっかぁ」
「うん、そうそう…」
健斗はアルに頭を撫でられて、とても成人男性とは思えないが落ち着いたのか「じゃあ夜一緒にトランプしようね、約束ね」と約束を取り付け満足したようだった。
「じゃあ…観光もしたし疲れたから、休もっか!猛!いこっ!」
「えぇ?」
満足するが早いか健斗はそう宣言すると猛の手を引きさっさと部屋に入ってしまった。猛はそこでやっとハッとしたように我に返っていた。
「………」
「……」
後には俺とアルだけが残される。そこで俺もハッと我に帰った。
「…俺たちも部屋で少し休憩しようか?」
「うん、疲れた…」
声をかけるとアルはもうすでに見慣れたアルに戻っていたが俺の横を通り部屋に入るときに俺の頭もポンっと撫でていった。きっとそこに深い意味はないがそれを嬉しく思った。
ともだちにシェアしよう!