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感じる能力

椿がキューカをくれた。それで色々あって杉田さんと温泉に行くことになった。 「うわああああ!!大きい!!大きいね!!」 「先輩!しーっ!」 小さくて、大きい声なのは健斗で。健斗を追いかけてるのは猛っていう…今朝初めて……ではないけど覚えてないから初めて会って、健斗には泣いて抱きつかれ、猛にも泣きそうな顔で「お久しぶりです。」って言われて変な気分だった。2人とオレと杉田さんは仲良しだったんだって。だから2人とも杉田さんがしたみたいにオレが銀とは違うことをしたり、言ったりすると悲しそうな顔をしたし、オレが銀と同じ様なことをしたり、言ったりすると嬉しそうにしていた。健斗に教えてもらったけど昔も4人で温泉に来たことがあったんだって。杉田さんに頭を撫でられながら机の上に伏せて今までのことを思い出していた。 「……2人と会ってみてどうだった?」 すると杉田さんが声をかけてきた。少し考えて思ったことをそのまま口にする。オレが2人のことを話すと杉田さんは嬉しそうにするからオレも嬉しかった。 「いい人だよね?2人とも。」 「そうだね。」 「…俺に会えて嬉しそうだったね……」 オレがそういうと杉田さんのオレの頭を撫でる手が止まった。無意識なんだと思う。杉田さんはわかりやすいから、医者にいろんなことを感じ取る能力が鈍いって言われるオレでも杉田さんの思ってることがわかる時がある。多分杉田さんは今悲しそうな顔をしてた時の健斗と猛を思い出してるんだ。 「……でも2人とも悲しそうにもしてたね…」 そういうと今度は杉田さんの手がぴくってして、うろたえてるのがわかった。 「………それは…2人ともアルのこと大事に思ってるからだよ…」 杉田さんはそう言った。 「オレじゃなくて銀のことをね」 そう思ったけどそうは言わなかった。きっと言ったら杉田さんが悲しい顔をすると思ったし、あの2人がオレのことを大事に思ってるのだって嘘じゃないって知ってるから言わなかった。 「……………ふーん…」 だからそう言って顔を伏せたら杉田さんはなんだか不安そうにオレの頭をまた撫で出した。

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