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銀もどきの正体
「……芸能事務所…?」
「はい」
思ったことをそのまま口に出した。
マネジメント部門ってことはこの人は俗にいうマネージャーっていう仕事?なのか…ってことは…
名刺から顔を上げて銀もどきに視線を送る。
銀もどきはなんていうか…カレーを一生懸命食べてる真っ最中だった…頬に米ついてるし…
するとその星野という人がオレの目線で察したのか説明をしてくれた。
「あ、そうなんです…彼、うちのモデル…というかこれからモデルになる者でして…アル君というんですが…」
「…はぁ…」
「その…彼、顔とスタイルだけはとんでもなくいいので……」
「…あぁ…まぁ…」
ガツガツとあまり上品とは言えない感じでカレーを頬張る自社モデルに苦笑いしながらその人はそういった。
銀もどきはアルジェントって名前でこれから売り出すモデルのようだった、今日がその売り出し一発目の化粧品の広告の撮影日だったらしく来月発売の雑誌に載ったりポスターになるらしい。
メインは別の女優さんでその相手役としての引き立て役が彼の役目らしかった。
でもその化粧品会社も薬局で見たことある名前だし、相手の女優さんも名前の知ってる女優だった。
俺今シーズン彼女が出てるドラマみてるよ…
そんな仕事を任せてもらえるあたり相当期待された新人みたいだ。
…確かになかなか見ないレベルの美形だもんな……でも…銀じゃ…ないのか…
一番初めに思ったのはそんなことだった。こんなに簡単に見つかるわけないって思ってはいたけどでもやっぱり期待してた。その希望が消えて暗い気持ちになる。
しかも俺…いくら似てるとはいえ銀じゃない人とシちゃったんだ…
そのことがさらに気持ちを暗くした。星野さんがその後も何か話し続けてたけどイマイチ頭に入ってこない。
するとその時、ピトっと冷たい何かが頬に触れて驚いて跳ね上がった。
「っひゃっ!!」
「わっ!!あ、コラ!!アルくん!!アイスはもうだめだよ!!さっき車の中でも食べたでしょ?」
「ちがう…オレが食べるんじゃなくてこの人にあげんの…」
「またそうやって屁理屈こねて!!あーもう封開けちゃだめだって!!」
「いいじゃん、太らなければいいんでしょ?オレ太らないし…」
「そういうわけじゃないよ!!体に悪いでしょって…」
「………」
気づくとその銀もどき改めアルが後ろのソファに座ってカップアイスを食べようとしていた。どうやらそのアイスを俺の頬にくっつけたらしい。
食べ終わったらしいカレーの皿は後片付けもされず机の上に残ってた。
も~とため息をつきながら星野さんがまた立ち上がってそのお皿を片付けにいく。
「………」
「………」
同じ部屋にはいるものの急に彼と二人っきりにされて気まずい気持ちになる。
しかも彼はじーっとこっちを見ていた。
別に食べたいわけじゃないけど結局アイスも自分で食べてるし…
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