「……よいしょ…」 「!!」 じーっとこっちを見つめる彼を横目で確認しつつ星野さんが戻ってくるのを待っていたら、突然アイスを食べてたアルがソファから降りて俺を長い足の間に収めるような座り方をし始めた。慌てて立ち上がろうとしたけどこれまた長い腕で腹のあたりをホールドされて立ち上がれない。突然の意味の分からない行動への恐怖で固まる。こんな時でもそういえば銀も昔よくこうやって座ってたなんて思いだしていた。 「……えっと…あの…」 「…ん…あげる…」 「…へ…」 「はい、ほら、あーん」 「んんー!?」 謎な行動をとる彼にやんわりどいてもらうよう促そうとしたら突然口にアイスの塊を突っ込まれた。口の中が冷たくて慌てて咀嚼して飲み込む。 その間彼はじーっとこっちを見つめてオレが食べるのを観察していた。 やっとの思いでアイスを飲み込む。 「…あ、あの…!!っむぐっ、んんー!!」 「……おいしい…？」 やっとアイスを飲み込んだ口を抗議のために開いたらまた口にアイスを入れられた。 な…なんなんだこいつ… その後何度か同じようなやり取りをしてたら星野さんが戻ってきた。 「アル君なにしてんの!?」 「アイスあげてる…」 「彼嫌がってるじゃないか!!」 「え、そうなの…？」 こうしてやっと俺はアイス地獄から解放してもらえた… なぜかまだ彼の膝の間からは解放されてないけど… なんなんだ…本当に… 「……やっぱり銀ではないか…」 「は…？」 「えっ？」 奔放な彼の一面を再度目撃してなんとなく思った感想をボソッと口にしたら予期せず場の空気が凍った。 急に星野さんが固まってじっとこっちを見たまま動かなくなる。 アルももともと動かないししゃべらないのでシーンと部屋が静まり返った。 「あの…今なんて…」 「…え……」 「だから今なんて？」 「や、やっぱり銀じゃないのか…って…」 「………」 俺のその発言を聞いて星野さんがちらっと俺の後ろでアイスのスプーンをかじっているアルに視線を向けた。 アルはその視線に首を振りながら答える。 「言ってないよ。初めからこの人そう言ってたよ。」 なんだか展開がよくわからなくて星野さんとアルを交互に見る。 星野さんはアルのその返事を聞いてはぁーっとため息をついてから何か考えていた。