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見る力3
「とにかく私はアマテラス様を呼び戻してくる。ここは柊、お前に任せますよ」
「はい、よろしくお願いします」
「幸、其方 はちゃんと横になって休んでおるのだぞ?」
「は、はい……」
少しきつい物言いだが、心配してくれているのだと分かる。
初めてアマテラスと朝食を取った日を思い出す。
あのあとのトヨウケヒメの態度は間接的にだが、幸に対して好意的ではなかったように思えた。
『豊葦原は神にとってよくない環境』『その豊葦原にいる人間もよくない存在』あの時は、そんなふうに聞こえた。
神からすれば人など下等な存在だから優しくされないのかと思っていたが、ただ単に言葉や口調が直線的だっただけのようだ。
感情的になった幸を抱きしめ、背中を摩って落ち着かせてくれた。
今は大丈夫なのだ、と安心させてくれているのが何よりの証拠だ。
「トヨウケヒメ…」
「あの方ならきっと事情を説明して、主様をここへお連れして下さるはずです!
さぁ、幸様は体をお安めになって下さい。目を瞑るだけでも体は回復します」
「うん。分かった…少しだけ眠るから、アマテラス様がお帰りになられたら起こして」
「もちろんでございます。お目覚めになった時、林檎をお出ししますね」
「やった。僕、林檎好きなんだ」
「では、たくさん剥きましょう。アマテラス様と召し上がれるように…」
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