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後朝の別れ2
幸に神気が宿ってから四日が経った。
寝たきりの幸だったが、次の日にはある程度普段と変わらない生活が遅れるようになり、神気も安定していた。
神気のことは柊から教わった。
神気はいわゆる神通力のようなもので、神気が強いということは力があり、序列が高いということらしい。
神気を持っているものは人ならざるものが見えるようになるという。
昔から恐ろしいものばかり見えていたのはそれが原因だったということが、今になって分かったが、神気が戻ったということは、再びあの恐ろしいモノが見えるようになり、襲われる危険が付きまとうということと同意だ。
また一つ幸の悩みの種が増えてしまった。
あの日以来、アマテラスはこの屋敷に顔を出していない。
政が忙しいのか、ただ単に幸に失望し寄り付かなくなったのか…。
そんなことを悶々と考える日々だ。
しかし、途中から記憶はほぼないが、あの夜のことはところどころ覚えている。
アマテラスが心にも温もりを与えてくれたことだけは確かに覚えていた。
「嫌うわけがない」「愛し子」――
それが耳にこびりついている。
今はその言葉を頼りに、アマテラスに言われたようにこの屋敷で暮らし、アマテラスの帰りを待つしかない。
「アマテラス様……」
今日も縁側で庭を楽しむ。
この日の茶請けは幸の好きな三色団子だった。
柊と並んで食べると、寂しさも紛れる。
「やっぱりこの店のお団子は美味しいね」
「はい!今日も早くから並んで買って参りました!」
「ありがとう、柊。またよろしくね」
「…今日も主様は帰ってこられないんですかね…」
残った一つの三色団子を悲しそうに見つめ肩を落とす。
ため息と同時に狐耳が萎れた花のように元気をなくす。
柊も最近こんな調子だ。アマテラスの情報は大概知っているものだと思っていたが、どうやらそうではないらしい。
「幸様を放っておくだなんて、いつもの主様ではありえません。ですから、何か特別な理由があると思うのですが…」
「柊も何も聞いてないんだね」
「はい、トヨウケヒメ様もこちらにはいらっしゃいませんし…」
今日も味気ない時間を過ごした。
アマテラスと過ごしたのは一週間にも満たない期間だったが、自分を必要としてくれている存在に出会えたことで毎日が楽しかった。
それがもう戻ってこないと思うと、ただただ胸が苦しかった。
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