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本当の意味

「…っ!」 それがアマテラスの唇だと理解するまで、そう時間はかからなかった。 それは、あの夜に幸は嫌という程アマテラスの唇を味わっているからだ。 唇が離れたあと、驚くと同時に理解が追いつかなくてアマテラスと距離を取った。 「…俺としたことが。怖がらせてしまったか?」 それは違うと大きく首を振って否定する。 「アマテラス様は私のことをそうやっていつもからかって…」 「俺が誰彼かわまず戯れにこんなことをするとでも?」 「……」 「幸、お前はもう知っているのではないか?自分の真の役目を」 「真の役目…?」 本来斎王の役目は、アマテラスが用意したと言われる屋敷ではなく、斎宮と呼ばれるところで生活し、年に三回のお詣りや、アマテラスに大玉串を捧げるという祭祀を執り行うなどだ。 それ以外の何が役目だというのか、検討もつかない。 「柊が誤って口を滑らせてしまったと聞いているが」 「…っ!!」 「そのようすでは、思い出したようだな…」 アマテラスが妖艶に微笑みゆっくりとこちらに近づいてくる。 頬をアマテラスの左手が包み込む。 『よく聞け』幸の目を射抜き、そう前置きをして口を開いた。 「幸、俺はお前を伴侶にする

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