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幸の家

「ここがこれから暮らしていただくお住まいになります。ささ、どーぞどーぞ!」 「こ、こんなに立派なのが!?お仕えする身だからもっと小さいものだと思ってた」 神宮の敷地内にこんな立派な家をしかも、幸たったひとりだけのために建てたことに驚いてしまった。 それに、柊に付いて来ただけでここがどこだかさっぱり分からなかった。 周りには社もないし、人目に付きにくい場所だということだけは何となく理解できた。 「宮中には断然劣りますが、幸様に決して不自由をさせないようにと主様(あるじさま)の言いつけでございますから」 「さっきから言ってる『主様』ってここの一番偉い人?」 「左様でございます。生活に必要なものはすべてそろっておりますので、ご安心ください。 お茶を入れてきますので、中に入ってお休みになってください。茶菓子もありますよ!」 「そうなの?嬉しいな。柊も一緒に食べよう?」 「付き人が同じ空間で食事など、言語道断です」 「いいんだよ、気にしないで。お近付きの印に」 「よろしいのですか!?ありがとうございます!」 自分も食べられるのがよほど嬉しかったのか、目をキラキラと輝かせて本来の子どもらしい表情を見せた。 所在ない幸は柊がお茶の用意をしている間に、いくつか部屋を見て回ることにした。 一人では空間を持て余し過ぎるほど広く、庭には見たこともない美しい花や木が植えられ、とてもきれいに剪定されていた。 苔むした大きな岩や小川、小さな赤い橋もある。 底まで見えるほど澄んだ池には、日の光で七色に輝く魚が優雅に泳いでいた。 屋敷も十分すぎるほど広いのに、こんな庭まで付けてもらって何だか恐縮してしまう。 この屋敷の母屋は、コの字型になっており庭を見ながら縁側を歩けば全ての部屋に行くことができた。 なんと配慮が行き届いた屋敷なのだろう。 「(みやび)な庭だ」 「これも幸様の気に入る、心が惹かれるような庭にせよ、とのご要望で」 後ろで少し得意そうにしている柊がお盆を持って現れた。 やはり、これも『主様』の計らいによるものだった。 柊の言う『主様』はなぜこんなにも親切にしてくれるのだろうと幸は疑問を抱いた。 「その主様はどこにいらっしゃるの?」 「今ここにはおられません。4、5日ほどすればお戻りになられるかと」 「そうなんだ。じゃあ、しばらくはお礼が言えないね」 少し残念だった。

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