この屋敷に住み始めてからというもの、いつも同じような夢を見る。 夢の中で幸はいつもあの縁側に座っていて、都では見たことのない美しい衣服を着た人物と会う。 髪は艶やかでとても長く、横の髪は金の飾りで緩くまとめられている。 そこに佇んでいるだけで煌びやかな雰囲気を纏うその人は、顔立ちもまるで彫刻のようだった。 「レイコ…なのか？」 初めて夢の中で出会った時の第一声はそれだった。 「いいえ、私は幸と申します」 「人違いであったか…よく見ると顔も違うし、そのような格好をしているがお前は男だな」 「ど、どうしてそれを…っ」 「そんなもの見ればわかる。俺はそんなまやかしに騙されはせん」 性別が男だとバレたことにとても驚いてしまった。 幸が男だという事実は宮中の親族以外は知らないし、バレたことがないのに彼はこうもあっさりと幸の正体を見破ってしまったからだ。 （ていうか、僕の夢だからなんでもありだよね…） 「しかし、麗しいなお前は。髪も瞳も…」 彼は目を細めて幸の頬をなぞった。 夢なのに本当に触れられているような感覚がして、とても不思議な体験だった。 それからは、毎夜彼と縁側で会話をした。 なぜこのような格好をしているのか、なぜそうなったのか不思議な過去の出来事など、 自分の作り出した幻と分かっていても名前も知らない彼と話すのが、ここへ来てからの唯一の楽しみだった。 いくら会いたいと思って昼寝をしても現れない。 彼の元へは決まって夜にしか行くことができない。 時々それがもどかしく感じるのだった。