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夢2
「ご機嫌いかがですか、幸様」
「うん、ここに来てもうすぐ一週間だし生活にも慣れて来たよ。
いつもありがとう、柊」
「それは良かったです。そういえば、主様がもうすぐ戻られる頃ですね」
「そうだね。早くお会いしたいよ」
今日も縁側に座ってお茶を楽しむ。
ここにいるとあの夢の人を思い出し、幸は心を躍らせた。
「縁側でお茶をお飲みになるのがお好きなのですね」
「夢でいつもこの場所で話をする人がいるんだ。その余韻に浸りたくって」
「夢で誰かとお会いになっているのですか?」
「とても美しい人なんだ。名前も知らないけれど色々お話するのが面白くて。
決まって僕はその人とここにいる」
「もしや、それは幸様に好意を持っていらっしゃるお方なのかもしれませんね」
柊曰く、『夢に人が出てくるのは、その人が自分に会いたいと思っているから』らしい。
会ったこともない人にそんな風に思われているわけがない、と柊の話を流す。
「けれど、本当にそうならいいのに。本当にその方がいるなら、会ってお話してみたい。
ちゃんと本人と本物の縁側で一緒にお茶が飲みたいよ」
「一体どなたなのでしょうね?その夢の中の君は」
「僕は『光 の君 』と呼んでいるよ。佇んでいるだけで趣 があって煌びやかに見えるんだ」
「左様でございますか、私もそのような方一度お会いしとうございます!」
(今日も夢で会えるかな…?)
「そうだ!主様がお帰りになる前にきれいに掃除しよう」
「いけません幸様。それは幸様がせずとも私がきれいに致します」
「それじゃだめだよ。僕はここに置いて頂いている身なんだ、それにすることがないし…
斎王はもっと他の仕事があるんじゃないの?」
「いえ、幸様はここで暮らすのが今のお仕事なのです。ですから、余計なことはなさらなくてもよいのです」
「そんなぁ…!」
結局柊に掃除をする許可がもらえなかった幸は、ほうきで畳を掃いたり雑巾で床を拭く柊をただ眺めていることしかできなかった。
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【余談】今では、自分の夢の中に男性あるいは女性が出てきたら、自分がその相手に対して好意を抱いていると思うかもしれませんが、平安時代はその逆で夢に出てきた相手がこちらに好意を抱いていると考えていました。
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