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光の君と主様

「幸様!幸様!本日の夕刻に主様がお戻りになるとの連絡が」 「ゆ、夕刻!?夕刻ってもうすぐだよ?」 「はい、幸様に是非お会いしたいとのことです」 「でも、そんな!心の準備が…」 そんなことを言っているうちに、すぐに日は暮れていった。 小さな火の明かりしかないので、まだ日は落ち切っていなくともすでに薄暗くなっている。 そんな中、幸はドキドキしながら下座(しもざ)に正座をして待っていた。 「柊、いるか」 微かにそう聞こえてきた。 玄関で柊が対応し何やら話をしている。 幸は『主様』がわざわざ幸に会いに来たという事実で手汗が酷くなり、肌が粟立った。 ゆっくりと縁側を通ってこちらへやって来るのが分かる。 「ここか」 「はい」 「…入るぞ。柊お前は下がれ」 その声を聞いた瞬間、ドクンと胸が跳ねる。 主様は若々しい男性の声で、柔らかい印象を受けた。 どことなく声音が『光の君』に似ていると思ったのは、そうであってほしいという願望が幸の中にほんの少しあるからかもしれない。 慌てて頭を下げ、上座(かみざ)に彼が座るのを待つ。 歩く度に優しい匂いが漂い、庭の花々と同じ甘い香りがした。 「お初にお目にかかります、京より参りました斎王の有栖川宮 幸(ありすがわのみやゆき)と申します。 此度(こたび)は、(わたくし)のためにこのような立派なお屋敷を設けて頂き、心より御礼申し上げます」 「面を上げよ、幸」 そう声をかけられたので、ゆっくりと顔を上げて幸は驚きのあまり硬直してしまった。 「ひ、ひかるの…き、み…っ」 「光の君?ははは、それは俺のことか。情趣(じょうしゅ)があって良い名だな」 「申し訳ございません!主様とよく似たお方がおりますのものでつい…無礼をお許しくださいませ」 「構わん。それにそのよく似た者こそ俺だ。あの縁側で語らった時は楽しかったぞ、幸。 やっと会えた」 「え??」 話にまったくついて行けずにぽかんと口を開け、また固まる。 「俺の名はアマテラス、この神宮の祭神(さいじん)だ」

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