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アマテラス
「へ…?」
「聞こえなかったのか?俺はアマテラスだ」
(う、うそだ。そんなわけない!何かの遊びに違いない。神様が見えるはずなんてない!それに、僕にはそんな力なんてないんだし…)
「古事記やら日本紀 では女扱いされてはいるが、本当はこの通り男だ。大昔の阿呆 どもがこの俺を女と間違えたらしい」
今思い出すだけでも腹が立つ、と言いながら腕を組み眉をひそめる。
本当に目の前の方が神様と言われても、にわかには信じがたい。
「信じられんとでも言いたげだな?」
「も、申し訳ございません…」
「では証明してやる。幸、秋は好きか?」
「秋ですか?…はい。赤く染まる紅葉などは風情があって詩興 が湧きます」
「よし、この庭を秋にしてやろう」
唐突にそう告げると、庭の方に手を突き出し左から右へ移動させた。
するとどうだろう、庭の美しい苔の絨毯が真っ赤に燃える葉で敷き詰められているではないか。
岩や木々の配置も変わり、鹿威し が軽い音を響かせ、松のような木は紅葉に似た木に、花は石畳にとあっという間に庭が表情を変えた。
こんなことが人間にできるはずもなく、本物のアマテラスかどうかはさておき、夢でずっと会っていたことも相まって光の君が神であるということを認めざるを得なかった。
「これで分かっただろう」
「私の夢のことなど知る由もない方がご存知である時点で疑う余地もございませんでした。疑ってしまい誠に申し訳ありません」
深々と頭を下げると、彼にそばに来いと言われ幸は恐縮しながらも素直に隣りへ座り直した。
「そこまで固くなる必要はない。お前のために俺がしたいことをしているのだ、気にするな」
「はい、ありがとうございます」
幸の髪を梳き頬にそっと片手を添え、健気に頷く幸にアマテラスは破顔した。
すると幸の顔が見る見るうちに赤くなっていく。
それを彼は興味深そうにまじまじと観察していた。
「本物は一段と麗しいな」
「もったいないお言葉」
「夢ではなく現で会えたのだ今夜は本物と語ろうぞ?」
「私もそう望んでおりました。是非そのように…」
トクトクと早鐘を打つのは美しく尊い存在の瞳がこちらを映しているからなのか、甘い雰囲気に中てられたからなのか。
今宵は三日月、頼りない光が幸の頬を照らしていた。
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