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アマテラス2
「んん…?柊?」
どこかが人肌のようにじんわりと温かい事に気がついた。
その要因である者の名前を呼ぶが反応しない。
目を擦りながらその方向を見る。
「ひあっ!あ、アマテラス様!」
「んー?なにごとだぁ…?」
幸の声で目が覚めたのか、髪を掻き上げ眩しそうに眉をひそめる。
(きれい…)
白い寝衣 が着崩れ胸元がはだけているのを見てドキリとする。
非常事態にもかかわらず、その美しくも魅力的な所作に思わず見惚れてしまった。
「ってそんな場合じゃない!あ、ああアマテラス様!これはど、どのような状況なのでしょうか!?」
「ん?起きたのか。もう少し眠ればいいものを…」
「ち、違います!わ、私は…なぜアマテラス様と…」
「ああ、そのことか。お前が俺にもたれ掛かって眠ってしまったからな。
抱きかかえてそのまま床 でふたりで眠ったまでだ。何せお前が俺の服を掴んで離さんから、ククク…っ」
思い出したかのようにくつくつと笑うアマテラスの前で、幸は魚のように口をパクパクさせ言葉を失っていた。
顔を真っ赤に染めている幸を見てまた彼は笑った。
「も、申し訳ございません、私はまた無礼を…」
泣きべそをかきながら、まだ眠たそうな目の前の神に頭を下げる。
こんなことをしてしまって罰が当たると覚悟した。
「気にせずともよい。可愛らしい寝顔だったぞ?それより、どうだ。秋の庭は気に入ったか?
季節ごとにこうして庭を変えてやる。そうすればお前も飽きぬだろ?」
「ありがとうございます。…お言葉を返すようですが、先日までの庭はどうなるのでしょう?私あの庭がとても気にいってしまいました」
「そうか、あれが気に入ったか」
「はい、とても。もう一度あの庭が見とうございます」
「では、戻しておこう」
そう言ってまた昨夜と同じように手をかざして動かすと、何事もなかったかのようにあの美しい庭が現れた。
戻ってきた幸のお気に入りの景色を見詰めていると、柊がひょっこり現れた。
「おはようございます。主様、幸様朝食のご用意ができました」
「分かった。今行く。幸、また隣で寝てくれ。お前がいるとよく眠れた」
アマテラスは嬉しそうに告げてから寝室を後にした。
「へ?……えぇっ!?」
(またって…後何回こんな罰当たりなことが起こるの!?)
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