3 / 8

第3話

指先に荒く触れる切りたての髪 それを辿りながら、彼の影を追う。 そんな小さな幸せ、誰にも内緒の片思いのはずだった。 「ああ、その頭の形、やはりそうだ。こんにちは」 優しい声に驚いて振り返った先に見覚えのある愛しいひと。 心臓がリズムを崩して、手が震える 「偶然ですね、これからお帰りですか?」 鏡越しでない彼の笑顔。 ええ、良ろしかったら、お茶でも。 そんなことは言えるはずもなく、ただただ小さく頷いた。 わらび様 Twitter @wallabies

ともだちにシェアしよう!