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This could be love?-2

男に退去を促されて彼女は即座に従った。 夫の綾人に何か声をかけるわけでもなく、黙っていたことを詫びるでもなく。 逃げ去るように紫煙に霞む事務所を出ていった。 「……さて」 男は残された綾人に鋭く笑いかける。 「ご主人に何かいい案はおありで?」 「……何でもやります。覚悟はできています」 長い指でサングラスをずらした男は今一度綾人を見返した。 彼は勤務中に呼び出されたためにスーツを着用し、ネクタイをきちんと締め、銀縁の眼鏡をかけていた。 多重債務を抱えていた肉親が行方を眩まし、連帯保証人となっていた綾人は無情な裏切りによって代わりに多額の借金を背負い、自己破産した。 厭世的な濃い翳りを纏う彼にはどこかストイックな雰囲気があった。 二十九歳という若さで人生に失望しきっているような切れ長な瞳には嗜虐心を煽る虚ろな色香があった。 「ではご主人に体を売って頂きましょうか」

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