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This could be love?-3
妻が自分に黙って闇金に借金をしていた。
最初は驚いたが、今は、仕方ないという気もする。
男に抱かれるためにホテルへ向かう車中で綾人は密かに自嘲してみる。
結婚したのは二年前。
そして自己破産に至ったのが一年前。
それからはろくな会話もない年月がただ流れただけだった。
気づかなかった自分も自分だ。
「このホテルだ」
運転する彼に言われて綾人は何気なく視線を上げる。
シンプルな外観のホテルが視界に入り、ああ、けばけばしいところじゃなくてよかったと、妙なところで安心した。
「時間はきっちり二時間だからな」
闇金業者の支配人という肩書き、鋭い眼差しも持つ彼の名前は黒埼 といった。
初日に使用していた敬語は取り払われ、ぶっきら棒な物言いで綾人に必要事項だけを告げると駐車場でエンジンを停める。
「部屋番号は覚えてるな?」
「はい」
「俺はここで待ってる。終わったら戻ってこい」
勤務終わりでスーツを着たままの綾人は浅く頷き、黒埼は胸ポケットから煙草を取り出すと安っぽいライターで火を点けた。
「記念すべき姫はじめ、うまくやれよ」
うまくやれと言われても何をどううまくやればいいのか。
ベッドに仰向けとなった綾人はしばらく薄暗い天井を眺めていた。
ろくに顔も見なかった相手は綾人の足元にしゃがみ込んでいた。
綾人のペニスを頬張り、ねちっこいフェラチオを続けている。
双球を片手で揉まれながらもう片方の手で陰茎を扱かれ、先端にしゃぶりつかれて。
綾人は他人事のようにそれを受け流していた。
しかしさすがに挿入時の苦痛はそうもいかなかった。
「お疲れ様」
緩慢な足取りで戻ると黒埼は労いの言葉をポンと投げ、車を発進させた。
車用灰皿には吸殻が山盛りだ。
苦痛を引き摺る綾人は車内に籠もる煙に酔いそうになった。
「明日はどうする」
「……お願いします」
「健気だな」
「え?」
「返済のためとはいえ男相手に体を売る。なかなかの堕ちっぷりだ」
「……堕ちたところで息はできますから」
「はっ、そうだな」
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