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This could be love?-12

「かんぱーい!!!!」 ビールジョッキ片手に放たれた一段と騒がしい男女混声が熱気に包まれた居酒屋の店内に響き渡る。 カウンターで焼酎のロックを煽っていた黒埼は、薄く色づく黒サングラスの下で一重の双眸を瞬かせた。 「合コンか」 「そうみたいですね」 黒埼の隣で梅酒のお湯割りをゆっくり飲んでいた綾人は頷いた。 「佐倉さん、合コンしたことあるか?」 「生まれてこの方一度もありません」 スーツは脱いでいるがネクタイをきっちり締めたままの綾人はそう返事をし、闇金業者の支配人、黒埼に逆に尋ねた。 「黒埼さんはあるんですか?」 「ねぇな」 たこわさを摘みながらグラスの中の氷を音立たせ、黒埼は雄々しい喉を反らすと二杯目の焼酎を飲み干した。 「佐倉さん、ウチの仕事には慣れたか」 先月、任期満了ということで短期の事務スタッフの仕事を終えた綾人を黒埼は自分の事務所社員としてスカウトした。 もちろん督促訪問、督促電話といった脅迫紛いの業務などはさせず、顧客データの管理、お茶出し、掃除……簡単な仕事を任せている。 『私なんかでいいんでしょうか』 黒埼の申し出に戸惑いながらも隠し切れない嬉しさを表情に滲ませた綾人は、それは色っぽくて可愛らしく、思わずその場でスーツをひん剥いて押し倒したくなった黒埼は、本当にそれを事務所で実行し……。 「佐倉さん、あんた、変わったな」

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