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This could be love?-13

三杯目の焼酎を頼んだ黒埼は体ごと綾人の方に向き直るとカウンターに片肘を突く。 「そうですね」 綾人は斜め下に視線を下ろし、銀縁眼鏡をかけ直すと、仄かに香る酒を口に含んで微笑した。 「黒埼さんに会って体も気持ちも……以前と比べると、大分、変わった気がします」 「……」 体が先かよ、佐倉さん。 あんたってそういうトコあるよな。 無意識に煽るというか、誘うというか。 「あんたって隠れ淫乱だな」 思ってもみなかった黒埼の切り返しに綾人は酔いのため上気していた頬をさらに赤くした。 ああ、抱いた時と同じ肌の色だ。 そのワイシャツの下も似たような色合いに染まっているのだろうか。 熱気と哄笑に満ちた騒がしい店内にて、黒埼は、恋人の火照った肌に触れようとした……。 「兄貴ぃ、俺にも構ってぇぇええ!!」 綾人とは反対側の、黒埼の隣でカウンターに突っ伏して寝ていたはずの弟ががばりと起き上がったかと思うと黒埼の逞しい肩にしがみついた。 「兄貴ぃ、プレゼントちょうだい、兄貴の使った割り箸ちょうだい!」 「……」 「本当、仲がいいですね」 度が過ぎた兄への弟による愛情を日々目撃している綾人は今さら過度なスキンシップを間近にしてヒくこともなく微笑を続ける。 その微笑に幾許の寂しさが見え隠れするのを黒埼は見抜いていた。 過去、綾人は唯一の身内だった兄に蒸発されて無情な裏切りを経験している。 妻であった女も離婚届のみを残して彼の元から去っていった。 彼には家族がいない。 「羨ましいだろ、兄貴は俺のモンだぞ、コラ」 黒埼の首根っこにしがみついた弟は綾人を威嚇したかと思うと、電池が切れたように再びカウンターに突っ伏し、寝た。 黒埼は三杯目の焼酎を受け取ると弟の頭のそばに置き、十分に足りる額の金をその懐に突っ込んで、立ち上がった。 「帰るか」 「え、でも……」 「いつものことだ」 心配する綾人を立たせてスーツを着せ、壁側にかけていたコートも羽織らせてやり、黒埼は彼を連れ立って店を出た。

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