15 / 87
ポチくんの憂鬱-1
夕方の海は穏やかな波を砂浜に打ち寄せ、散歩やデートに訪れた人々をにこやかに出迎えていた。
「いい天気だね」
凪 は履き慣らしたサンダルでサクサクと砂浜を音立たせながら腕の中の彼に話しかける。
学校が終わり、自宅で私服に着替えた凪は近所にある祖父母の家へ向かい、そこで飼われている飼い犬のポチを連れて散歩にきていた。
腕の中でポチは「クーン」と鳴いた。
むく犬のポチは大人しく凪に抱かれている。
時々、子供が寄ってくると凪はしゃがみこんでポチを触らせてあげた。
「ポチっていうんだよ」
「ポチ、カワイイ」
「よかったね、ポチ。カワイイだって」
友達が茶髪になり、また別の友達が茶髪になり、じゃあ俺も染めてみようかな……とつられて市販のカラーリング剤で染めたブラウン系の髪をまだ明るい日差しに輝かせて凪は笑う。
蜂蜜色の肌は健康的で艶々している。
膝丈のハーフパンツから伸びた足はスラリとしていて、形のよいふくらはぎには砂をくっつけていた。
向かい側からやってきたラブラドールにも鼻を近づけてポチからご挨拶。
「可愛いわんちゃんね」
でしょ? ウチのポチ、ほんっとう可愛いんです!
ともだちにシェアしよう!