作者: 石月煤子

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ポチくんの憂鬱-11

「俺ね、弁護士なの。ある人の後見人をしてたんだけど、その人が亡くなって、その人の財産を整理しなくちゃならなくて。あの別荘もその一つ。今日は不動産呼んで査定してもらって、あとはあれ、取引あった消費者金融に過払い請求とかして、あ~、その前に家裁に申立して許可とらなくちゃだなぁ。書類作成はシンジにやらせるか」 最後は独り言で締め括り、蜩はハンドルを切る。 「……その眼鏡って」 「あ、これ? 伊達だよ。かけてたら目つきマシになるでしょ」 マシになるどころか、別人だ。 昨日はその筋の人だとばっかり……。 助手席に座る凪は上機嫌で坂道を走らせる蜩に目を奪われっぱなしだった。 昨日、どこの学校に通っているのかを聞き出していた蜩は約束通り凪を迎えに来たのである。 こんな弁護士、世の中にいていいのかな。 男子高校生に悪戯する三十代の大人の人。 いやいや、いちゃだめ、確実にいたら駄目な部類だ。 あんなことやこんなこと言わせて、あんなことやこんなことしてきて……。 本番は明日ね、なんて約束までとりつけてくるような変態の人……。 そんな変態の人の車についつい乗っちゃった俺は……もっと変態……? 「蜩さん、また連れてきたんですか」 別荘に着くと昨日と同じ格好のシンジがキッチンでベーコンレタスバーガーを食べていた。 「犬いないし。つまんないな」 「シンジぃ、とりあえず過払い訴訟の訴状作成頼むね。管轄は地裁と簡裁、法務局には訴訟相手の登記事項申請しといて」 「全部明日でいいですよね。本腰入れるのまだ先でしょうから」 仕事の会話をいくつか彼と交わし、蜩は凪を二階へと連れて行った。 それからは昨日のリプレイ、プラス、本番というわけで……。

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