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牡丹は蝶の翅のかほりに-10

「シンジぃ、俺にもパスタまいて?」 完全なる悪ノリで黒埼弟を真似た蜩がニヤニヤしながら言ってくる。 シンジはポーカーフェイスを崩さず、くるくるパスタを取り分ける。 「わぁ~これおいしいです!」 「よかったら私の分、食べる?」 「食べます!」 凪が綾人から鶏レバームース乗せガーリックトーストを分けてもらって最少年よろしくはしゃいでいる。 向こう、なんかきゃっきゃしていて、楽しそうだな。 「シンジぃ、ニョッキちょーだい」 俺、蜩さんの分を取り分けるので時間を費やしちゃいそうだ。 あんまり胃に入れないで酒をがぶ飲みしたから、酔いそうだな、気をつけないと……。 「おら、しんちゃん」 配膳係の如く先ほどから蜩にせっせと料理を注いでやっていたシンジの前に、コトリ、それぞれの料理がちょっとずつ盛られた小皿が置かれた。 感動さえ覚えてシンジが真正面に座る黒埼弟を見つめてみれば。 「なぁなぁ、兄貴、俺偉いだろ? 褒めて! 褒めちぎって!!」 すでに黒埼弟は隣に座る兄にじゃれついていた。 ……俺、この強敵、越えられる気がしない。 「気ぃ落とすなって、シンジ?」 長年の付き合いである上司は、ポーカーフェイスながらも部下が密かに意気消沈していることを察して、この状況を面白おかしく愉しみながらも励ましてやる。 ニヤニヤを止めない蜩に肩を叩かれたシンジは「はぁ、そうですね」と上の空で返事をした。 「ご兄弟、仲が宜しいんですねぇ」 「年が離れている分、何でも許してしまうと言いますか」 蜩の問いかけに黒埼は弟の金髪頭を撫でながら答える。 「年の差兄弟ですか、それは確かに放っとけないですねぇ」 「自分が三十七、弟が二十二でして」 十五の時に生まれた弟か。 それにしても黒埼君、二十二歳なのか、初めて知った。 俺より五歳も下なのか。 ……やばい、明確に知らされるとどきどきする。 「二十二だってよ、シンジぃ? このこの~」 三十路半ばで高校生と付き合っている性的観念不道徳弁護士の貴方に「このこの~」と言われる筋合いはないですよ、蜩さん?

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