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牡丹は蝶の翅のかほりに-13

兄貴とはかなり年が離れている。 兄貴が十五の時に俺は生まれた。 「あの子って利用されるためだけに生まれてきたんでしょ」 第二の母親がそう言っているのを偶然のタイミングで聞いた。 俺は第一の母親の顔を全く覚えていない。 永遠の愛を共に誓ったはずの男から裏切られて、心が故障したその女は、俺を放棄した。 何としてでも男を引き留めたくて、無理強いした同衾で俺という存在を腹に孕んで、わざわざ産み落としたっていうのに。 愛する男は前と変わらず家に帰ってこない。 結局、男は若い女と一緒になることを選択し、お古の女を廃棄することにしたのだ。 俺は第一の母親も第二の母親も父親である男のことも信用していない。 とにかく匂いそのものが嫌いだ。 腐臭みたいな、拒否反応を起こすみたいな、なんか嫌な匂いがする。 俺は道具じゃねぇんだわ。 ガラクタでもねぇんだわ。 大好きな匂いは見失わない。 結構長い年月を費やしたけれど、やっと、俺は待ち侘びていた居場所に辿り着くことができた。 「おかえり、六華(ろっか)」 兄貴、俺、ハチ公並に忠犬だろ?

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