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闇金事務所の恋愛事情-1

「なぁ、シンジ、最近黒埼君とはどーなの?」 上司のパワハラがまた始まった。 シンジは聞こえないふりをしてパソコン画面を前に書類作成を続ける。 最近、黒埼君と、どうか? 前と変わらず居酒屋で食べたり飲んだり、親しいお付き合い、させてもらっていますよ? 体を重ねたのは、初めての、一度きりで。 それ以来、全っ然、してませんけどね。 「飲みすぎたぁ、もう飲めねぇ」 その夜、六華は自宅に帰るのをまた面倒くさがってシンジ宅にお邪魔した。 服を脱ぎ散らかすなりパンツ一丁でベッドに派手に倒れ込む。 とりあえず脱ぎ散らかされた服を畳むと、シンジは、シーツに顔を埋めている六華をさり気なく見下ろした。 健やかに立派に成長した彼は伸びやかな体つきをしている。 太すぎず、細すぎず、見栄えよくバランスがとれている。 真夜中でしんなりした長めの金髪から覗くうなじとか、艶やかな牡丹の咲く背中とか、腰元の括れとか、ボクサーパンツに覆われた引き締まった双丘とか。 易々と視線を奪うくらいに魅力が尽きない。 ……これって視姦になるのかな。 「黒埼君、俺、シャワー入ってくるから」 「んん~」 「冷蔵庫の飲み物とか好きに飲んでいいから」 これ以上見過ぎるとよからぬ行為に走ってしまいそうで、自制も兼ねて、風呂に入ることにしたシンジ。 てきぱき着替えを準備すると浴室に向かう。 トイレは別の、浴槽と洗面台が一体になっているタイプのユニットバス。 座ればまぁのんびりできる、シャワーカーテンで仕切った浴槽内、立ったまま体をざっと流しながらシンジは悩む。 黒埼君となかなかそういう雰囲気にならない。 初夜を終えてから、何度か部屋に来ているけれど、今日みたいにいつもベッドにさっさと一人寝転がってしまう。 悪くはなさそうだったんだけど、あのときの黒埼君の反応。 もうちょっとガツガツいってみようかな。 でもヒかれたら嫌だな。 日焼けしにくいシンジの割と白い肌が明かりの下で控え目な光沢を放っている。 骨張った指で黒髪にシャンプーを馴染ませて、わしゃわしゃ、洗っていたら。 しゃっっ 「え」 ぎょっとして目を開くとシャワーカーテンを開け放った六華がタイルの上に立っていた。 「俺もシャワー浴びる」 そう言って浴槽内に平然と上がりこんでくる。 当然、素っ裸だ。 シャンプー中だったシンジは押し退けられてよろめきつつも、頻りに瞬きして、泡が目に入らないよう注意して六華を再度見やった。 長めの金髪を無造作にポニーテール結びした六華。 お湯が出っ放しのシャワーヘッドを掴むと、彼は、言った。 「洗ってやるよ、しんちゃん」 突拍子のなさに驚かされながらもお言葉に甘えることにした。 目を瞑って頭を低くすると六華はなんとも大雑把な手つきで泡立つ髪をゆすぎ始めた。 「おいてかれるとつまんねぇよ」 「え?」 「頭上げんな、洗いづれぇ」 「あ、ごめん」 「いっつも放置すんだもんなぁ、しんちゃん」 「……黒埼君、眠たそうだったから、その方がいいのかと思って」 「ベッドで一人、風呂からする音聞いてんの、寂しいもんだぞ」 「……」 「前は相手が風呂入ろぉがケータイ弄ってよぉが、なんって思わなかったんだけどなぁ」 しんちゃんは違うんだよなぁ。 「洗い残しねぇかな、かゆいとこは?」 「ないよ」 「おっし、完了」 六華は笑ってシャワーヘッドをフックに戻した。 シンジは濡れ渡る髪をかき上げて、真正面に立つ濡れかけの六華と視線を合わせ、礼を言う。 「ありがとう、黒埼君」 笑う六華に一歩近づいて、その肌に触れて。 「ごめん、寂しくさせて」 その唇に口づけた。 口づけるなり加速がついて。 初夜以来となる素肌の密着に一気に昂揚感が募り、つい、大胆になって。 「っ……ふ、っ」 温いシャワーが振り注ぐ中、シンジは溺れるように六華とキスを繰り返した。 背中に手を回し、抱き寄せ、背筋伝いに掌を這わせていき、かたちのいい双丘をぐっと強めに掴む。 「ん……っ」

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