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I fall into you-3

いつの間にかサイレンは鳴り止んでいた。 黒埼は肌色の移ろいに誘われるがまま、綾人に近づいて、うっすら開かれていた唇に口づけた。 紅潮していた頬に片手を添え、片手で顎を固定してやり、コーヒーの苦味残る微熱を舌先で掬う。 綾人の肩からゆっくり毛布がずれ落ちていく。 体伝いに滑落して音もなく床上へ。 「ん…………」 緩やかに角度を変えては舌尖で口内を愛撫してくる黒埼に綾人はぎこちないながら自らも擦り寄った。 縋り甲斐のある肩に両手を添え、薄目がちに見やれば、視線が重なる。 胸の底が焦がされるように熱くなった。 つい、欲しがるように喉を鳴らす。 唇と同様に正面も隙間なく密着させる。 深く交えた唇同士の隙間から滴り落ちていく唾液。 不穏なサイレンの代わりに小刻みな水音が奏でられる。 「は……ぁ……」 綾人は黒埼の肩に両腕を回して自分より上背のある体を抱きしめた。 どこまでも落ちていくようだった悪夢の残骸を振り払って。 愛しい男の腕の中におちていく。 「…………はぁ」 しばし続けていたキスを解くと互いの狭間に銀糸が連なった。 「……黒埼、さん、あの……」 「なんだ?」 「ベッド……行きませんか?」 「ここでいいだろ」 何もかもを曝け出してしまいそうな蛍光灯の明かりの下、綾人は紅潮しきった顔をほんの少し強張らせ、黒埼はわざとらしいくらい紳士的に笑ってみせた……。

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