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高校生編 第12話
オメガの対応遅れを咎められ、教師の説教から解放された時にはすでに文化祭が終わっていた。
そもそも、生徒会役員はアルファだけだ。そのアルファに、発情期のオメガの対応をさせるのが間違っていることに、気づいていないのだろうか。
蒼のことは翔太の番である優斗が自宅まで車で送り届けたと翔太から伝えられ、とりあえずホッと胸を撫で下ろした。
翌日は振替休日で、蒼に会いに行って、機会を逃してしまった告白をしようと心に決めてベッドに入った。
ーー翌朝。
「起きなさい! 紘一!!」
ゴミ出しから戻った紘一の母は、まだベッドで熟睡していた紘一を容赦なく叩き起こす。
「んー……なんだよ。今日は文化祭の振替休日で休みだって…………」
休みの日に朝早くから起こす母親を鬱陶しそうに、頭まで布団を被る。
「そうじゃなくて! 沢圦さんのところ、突然引っ越したみたいで、……紘一何か知らないの?」
「は!?」
眠気もいっぺんに吹き飛び、ベッドから飛び起きる。
「蒼ちゃん何か言ってなかった!?」
聞いてない! と言い残し、携帯を手に取ると、パジャマ変わりにしているスエットのまま、家を飛び出した。
蒼の家と紘一の家の間にある二軒の距離が、こんなに遠く感じたことはなかった。
「蒼!」
門扉を開け、リビングのある方へ外から回る。
中はカーテンもなく、もぬけの殻だった。
蒼に電話をかける。
コール音は鳴らず、お客様のおかけになった電話番号は現在使われておりません、と自動音声が繰り返し流れるばかりだった。
ズルズルと力なく、その場で膝を着いた。
昨日、自分の手の中にいた。
蒼の温もりは今もすぐに思い出せる。
「蒼……なんで……」
紘一の独白は、涙とともに地面に吸い込まれた。
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