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高校生編 最終話
文化祭が終わり、文化祭実行委員の解散式が生徒会室で執り行われていた。
結城紘一はパイプ椅子に長い脚を組んで座り、生徒会室の後ろから、その様子を眺めていた。
「皆様、お疲れ様でした!」
進行していた高瀬の挨拶で締めくくられ、解散式はお開きとなった。
高瀬の言葉はほとんどが耳を素通りし、紘一は失意のどん底にいた。蒼と過ごした時間を思い出す度に、胸が苦しくなる。予期せぬ別れに、何も伝えられなかった自分が不甲斐ない。
「あの、僕、沢圦くんと同じクラスで……美術部で……」
いつの間にか紘一の目の前にいたのは、文化祭のジンクスを聞いてきた一年生だった。
「この絵、なんですけど……」
眼前に差し出されたのは、文化祭の時、二年三組に転がっていた黒く塗られたキャンバスだ。
「?」
「沢圦くんのなんです」
キャンバスを裏返すと、そこには「大切な人 一年 沢圦蒼」とあの日プレートに書かれていた文字と同じ文言が記されていた。
「ほんとは、ここに、ちゃんと絵が描かれてたのに……誰がこんなこと……」
携帯を取り出すと、一枚の画像を紘一に突きつけた。
「絵が完成した時に写したものです」
見せられたら画像には、笑顔の蒼の横に描かれていた絵が写っていた。
「これ…………俺だ…………」
絵には紘一の横顔が描かれていた。並んで歩いていた、蒼から見た紘一の横顔。
嗚咽が漏れそうになり、口を塞ぐ。
「文化祭のジンクスも、沢圦くんが告白したい人がいるって……だから、会長にそのジンクスが本当か聞いて欲しいって頼まれて……」
「蒼が告白……?」
「会長に告白するんだと思ってました……。会長に聞いて、って何度も念を押されたので……」
蒼が誰に告白したかったのか、今となっては正解は誰もわからない。
「沢圦くん、突然引っ越しって……色々話したいこともいっぱいあったのに……先生達もどこに行ったか知らないの一点張りで……会長はご存知ですか?」
学校には速達で退学届が届いていたらしい。学校としても寝耳に水のようだった。
「…………俺が知りたいよ……」
蒼の行方を誰でもいいから教えて欲しい。紘一は力なく項垂れた。
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