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社会人編 第8話

 蒼との再会後、一ヶ月が過ぎた。あれから蒼の発情期はまだ来ないーー。そして、息子の光に父親として認められていないままだ。 「光様ーー! こっち向いてーー!」  今日も黄色い声が飛んでいる。体育館だったり、グラウンドだったり、場所は様々だが、黄色い声援の矛先はいつも和泉光だ。 「和泉は本当に人気がありますね。転校してきてまだ一ヶ月ほどなのに」  職員室からグラウンドを眺めながら、学年主任が呟く。その呟きに紘一が応じた。 「そうですね」  自分の子供、というのは学校には伏せたままだ。  グラウンドでサッカーに興じている光に、熱い視線を送っている生徒の中に、苦虫を噛み潰したような表情をした、生徒会会長の藤堂の姿があった。どこで手に入れてたのか分からないが、発情誘発剤などという怪しい薬を所持しており、紘一は他の教師と情報共有しながら藤堂の動向を探っていた。 「和泉。ちょっといいか?」  グラウンドから戻って来た光を、昇降口で待ち伏せる。ここ最近の紘一の日課だ。 「……………………イヤだ」  かなり間が空いた後、拒絶の言葉だけが、光の口から滑り落ちる。 「先生今日もフラれてやんのー! ウケるー!」  光と一緒にグラウンドから戻ってきたクラスメート達が、毎日繰り返される紘一と光のやり取りに口を挟む。今のところ、紘一は全戦全敗だ。  紘一は人知れずため息を吐いた。  その姿を藤堂が物陰から見つめていた。

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