24 / 30

社会人編 第10話

「ええ。勿論」  藤堂の返事に、紘一はわざとらしく、大きく溜め息を吐いた。 「会長のくせに頭が悪いのか? 呆れるよ。アルファはオメガと番になっても、一方的に解消出来る。番を解消されたオメガは、一生誰とも番になれないし、発情期に苦しむことになる」  いつもの紘一からは考えられないような、残酷な言葉の数々が吐き捨てられた。  藤堂は何も言えず、ただ紘一を見つめるだけだった。 「俺は藤堂には全く興味がない。もし番になってもすぐに解消する。その場で」  鋭い視線で断言した。  藤堂が反応しないのを確認すると、紘一は光の傍に屈み、拘束しているビニール紐を解き始めた。 「今まで手に入らないものなんか、何もなかったんです。欲しいものは手に入れる。先生が手に入らないんだったら! 先生との子供だけでも!」  拘束を解かれた光は、立ち上がり藤堂に反論した。 「馬鹿なこと言ってんじゃねぇよ! オメガが一人で子供抱えて生きていけるほど、世の中そんな生易しいもんじゃねぇんだよ!」  光自身、小さい頃から今もなお経験していることだ。紘一の心にグサリと刺さる言葉だった。 「うるさい!」  藤堂は人に自分の考えを否定されることなく、生きてきたのだろう。激昂し制服のポケットから何かを取り出すと、光に向かって走り出した。 「危ない!」  光を突き飛ばした紘一の太腿に、注射が突き立てられた。 「……くっ……何の薬だ……」  全身から急激に力が抜けた。  視線の先の藤堂は、ただひたすら首を横に振るばかりだ。  体内に打たれたのは、死への片道切符ーー。 「光、お前に会えて良かった……。蒼を頼んだぞ……」  片膝をつき、力を振り絞って光に想いを伝えると、紘一は床に倒れ伏した。 「先生? ……嘘だろ? おい! 何か返事しろよ!」  揺すっても、紘一は目覚める気配はない。 「おい!! 親父!!!!!!!!」  光の声が、教室に虚しく響いた。

ともだちにシェアしよう!