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高校生編 第3話
好きな人の声を、朝一番に聞けたら、それは最高な一日の始まりだと思う。
単純、だろうか。単純でもいい。そこに、自分の幸せがあるのだから。
鳴り止まない携帯のコール音にもぞもぞとベッドから這い出し、サイドテーブルに乗せた携帯を手に取る。
半開きの目で小さな液晶を確認する。表示されているのは「蒼」の文字だ。
「もしもし」
通話ボタンを押すと、寝起きの少し枯れた声で応答する。
『あ、紘兄! やっと起きた!』
蒼の声音で、心底呆れた様子の表情をしているのだろうと見て取れる。
「悪い……。ありがとう」
朝が弱いと言えど、いつもは携帯のアラームで目を覚ます。アラームで起きれず、親に起こされるのは、ひと月で一回あるかないかだ。
昨日は、蒼にモーニングコールしてもらえる嬉しさから、なかなか寝付けなかった。ようやく眠りについたのは、新聞配達のバイクの音が聞こえてくるぐらいの時間帯だった。
『じゃあ、またあとで』
短い電話を終えると、紘一はベッドから立ち上がり、背伸びをする。ささやかな幸せを噛みしめながら、同じタイミングで出張に行ってくれた両親に心の奥底で感謝した。
放課後、生徒会室では文化祭実行委員会が開かれていた。
「ステージを使うクラスは準備、片付けを含め持ち時間は三十分です。タイムスケジュールは後日配付します。これで文化祭実行委員会を終了したいと思いますが、何か質問がある人はいますか」
滞りなく会議が終わろうとしていたが、実行委員の一人がおずおずと挙手した。
「どうぞ」
紘一は挙手した一年生の実行委員に発言するように促す。
「あの! 文化祭のジンクスって本当ですか?」
突拍子もない質問に、紘一が首を傾げる。
「文化祭の期間中に告白が成功したら、そのカップルは永遠に結ばれる、という話です」
翔太がフォローをする。
「へー。初めて知った。そんなロマンチックなジンクスがあるんだな。けれど、それが本当かどうかは回答できない。統計を取っているわけでもないし……ただ、ジンクスを信じて告白してみるのも悪くないな」
自己投影するように、紘一が呟くのと同時にチャイムが鳴り響いた。
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